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「死の疑似体験」で彼女が気づいた"母子の呪縛" 「手放す」ことではじめて実感できる関係もある

東洋経済オンライン / 2024年10月14日 19時0分

「死の体験旅行」の本編では、進行役の私がある物語を語ります。ある人が病にかかり、病気が進行するなかで死に近づいていくというストーリーです。

その合間には、「ここでカードを手放してください」という指示のもと、カードを取捨選択していかなければなりません。死者は、どれだけ大切なものであっても死とともにそれを所有し続けることはできません。つまり、大切にしているものを「手放す」ことで「死」が実感されるのです。

「死の体験旅行」の後半30分では「シェアリング」ということを行うのですが、これは、本編以上に重要な部分です。どのカードを手放したときにつらく感じたか、どのカードを最後まで持っていたかなど、あれこれ語り合うのです。

そこで語られる感想は、三者三様、じつにさまざまです。「大切なものを手放すというのが、こんなにつらいとは思わなかった」という人もいれば、「これまでないがしろにしてきたものが大切なものだったことに改めて気づいた」と語る人もいらっしゃいます。

本編で涙を流していた人も、このシェアリングを通じて晴れやかな表情を見せてくれることが多いのです。

最後の1枚に残ることが多いのは「母親」

「死の体験旅行」では、なにが自分にとって大切なものなのかに気づいたり、あるいは大切だと思っていたものが意外と重要度が低かったことに気づかされたり、多くの人にとって新鮮な発見が得られることがあります。

大切な人やモノやコトを書いたカードを、物語が進むとともに悩みながら手放していきます。なにを手放し、なにを残すのか、そこに正解はありませんし、違うタイミングで受ければ変化も生じます。1日ずれただけで、人生でもっとも大切なものが変わり得るのです。

そうはいっても、なにが残りやすいかの傾向はあります。やはり、最後のほうに残りやすいもの、また最後のひとつに残りやすいものは「人」であることが大多数です。

なかでも最後の1枚が「母親」になることは、そう珍しいことではありません。というより、おそらくもっとも多いのが「母親」ではないかと思います。父親も母親も大事な親であることに違いはないのでしょうが、自分を産み育んでくれた存在ということで、ギリギリの選択では「母」となるのでしょう。

「死の体験旅行」をはじめて間もないころ、印象的な感想を口にした若い女性がいました。

その方は20歳前後に見え、学生さんかな、それとも社会人になりたてかな、という初々しい雰囲気でした。平日夜の開催だったため仕事帰りの方も多かったのですが、彼女は服装やメイクの感じも少し華やかだったので、より印象に残ったのかもしれません。

「母親より先に死ぬ自分」が気づかせてくれたこと

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