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「死の疑似体験」で彼女が気づいた"母子の呪縛" 「手放す」ことではじめて実感できる関係もある

東洋経済オンライン / 2024年10月14日 19時0分

本編を終え、最後のシェアリングで1人ひとりの感想に耳を傾けていました。彼女は「最後の1枚は、ママです」と言いました。

「死の体験旅行」の本編では、ある人が病にかかり、病気の進行とともに命を終えていくストーリーが語られます。そのストーリーのなかで自分が体調を崩している場面を想像したとき、幼いころに母に看病されたときの記憶などが脳裏に浮かぶのかもしれません。

そのときの受講者の多くは年代が若く、親が元気でいらっしゃる方が多いということもあったのだと思います。これが年配者向けの開催で、親が亡くなっている年代の方が受講すれば、また結果は違ってきます。

「最後の1枚は、ママです」と言った彼女は、さらに言葉を続けました。

「私はママととても仲がよくて、友だちみたいな親子なんです。ママのことが誰よりもいちばん大事だと思っていました。けれど最後の1枚のカードを見て、私はその大事な人に、自分の子どもが死ぬ姿を見せてしまっているという情景が目に浮かんだんです。ママがいちばん大事だと言いながら、それよりも自分のほうが大事だっていうエゴがあることに気がつきました」

私はその言葉を聞いて驚きました。「私はママが大好きで、やっぱりいちばん大事でした」という言葉だけだったら、記憶に強くは残らなかったでしょう。しかし、そこから1歩も2歩も踏み込んだ自己認識の言葉にギャップを感じ、驚かされたのです。

「死の体験旅行」で配られる20枚のカードには、自分の大切なものや人、思い出や目標などを書き込みます。それらを取捨選択していくのですから難しい判断を迫られるのですが、なかには自分が想像していなかったような進み方をする人もいます。

残り4枚のなかに想定外のカードが入っていた清水さん(仮名)も、そのひとりです。

「一人旅」のカードが最後に残った意外な理由

20代の女性・清水さんは、物語の後半、残り4枚になったカードを改めてじっくり見つめ直しました。そしてそのうちの1枚「一人旅(知らないところへ)」に対して、「なぜこのカードが残るんだろう?」と、自分でも不思議に思う気持ちがわいてきたと言います。

清水さんは大学進学を機に故郷を離れ、都内で1人暮らしをはじめ、社会人になって数年がたっています。ときおり帰省をすると、母親とはお互いに近況報告をし合う仲のよさです。

じつはご両親は、清水さんが幼いころに離婚をされています。母親はエネルギッシュな反面、病気がちで、入院や手術をすることも珍しくありません。清水さんは「死の体験旅行」のなかで病気になる疑似体験をし、母も病で苦しかっただろうと思いを馳せます。そして、そんな状態のなか、母が自分を懸命に育ててくれていたことにも気づかされたと言います。

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