「2024年問題」ドライバー不足を救う驚きの仕組み フィジカルインターネットは物流危機を解決するか
東洋経済オンライン / 2024年10月14日 9時0分
次世代の物流システムとして期待される「フィジカルインターネット(PI)」の開発が2025年春の実用化を目指して進んでいる。トラックドライバーの深刻な人手不足に対応するため、荷主企業が協力してトラックの積載効率を高める「共同輸送」が始まっているが、PIではITを活用してオープンに「共同輸配送」を利用できる環境づくりを目指す。
【画像でわかる】物流危機を解決するためのフィジカルインターネット
具体的には、新幹線や航空機の座席予約システムをイメージするとわかりやすい。荷主はまずトラックの荷台の空き状況をネットで調べて予約する。次に、トラックが発車する「物流施設」に荷物を持ち込むと、目的地の「物流施設」まで運んでもらえる。PIとは、こうした仕組みを動かすための情報プラットフォームだ。
「物流の2024年問題」に対応するために登場
2024年5月に伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所の5社が、PIの事業化の共同検討を開始する覚書を結んだのを最初に、6月にはNECと日野自動車の関連企業のNEXT Logistics Japanが戦略的提携の検討を開始し、PIの開発を表明。
物流ベンチャーのHacobuも、8月にアスクル、キリンビバレッジ、スギ薬局、日本製紙、YKK APの5社と業界横断型の「物流ビッグデータラボ」を創設し、9月には三菱食品と共同輸配送支援サービスの実証実験を開始するなど動きが活発化している。
政府は、トラックドライバーの時間外労働規制の導入による「物流の2024年問題」に対応するため、2022年3月に「フィジカルインターネット・ロードマップ」を策定し、PIの実現を後押ししてきた。それから3年で最初のPIサービスが登場する見通しとなったわけだが、果たして物流危機を乗り越える切り札になるだろうか。
約2年前に筆者はフィジカルインターネット(PI)を紹介する記事「平気でネット通販する人が知らない『2024年問題』」を掲載した。政府が2040年を目指してPIの実現を打ち出したものの、一般にまったく知られていないばかりか、物流業界でもPIの話題が乏しく、盛り上がりに欠けている印象があったからだ。
日本のIT戦略は政府が旗振りをしても企業や社会への実装がなかなか進まず、世界のなかで大きく出遅れる失敗を繰り返してきた。IMD(国際経営開発研究所)の世界デジタル競争力ランキングでは、最新の2023年版で日本は3つランクを下げて32位と過去最低を記録した。
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