ベトナム発「予約困難ピザ店」東京進出の舞台裏 Pizza 4P's設立「元IT系勤務」日本人夫婦の情熱
東洋経済オンライン / 2024年10月16日 11時0分
その思いを胸に、益子さんはベトナムでピザを主軸にしたレストランを展開し、「Make the World Smile for Peace」(平和のために、世界を笑顔に)というビジョンを追求し続けているのです。
フレッシュチーズを自前でつくる
看板商品であるピザには益子さん夫婦のビジョンへの想いが詰まっています。創業当時、ベトナムではほとんど見かけることがなかったフレッシュチーズづくりに着手したのも、ベトナムの人たちに幸せと笑顔、そして平和を届けたいという思いがあったからです。
「起業して間もなく、自宅兼店舗の地下にあった小さなキッチンでフレッシュチーズづくりに取り組みはじめた。生産環境は決して良好とはいえなかったが、トライ&エラーを繰り返し、少しずつレベルを高めていった」と益子さんは話します。
試行錯誤の末にできあがった風味豊かなフレッシュチーズとそれを用いたピザは、顧客の心を着実に掴んでいきました。
まずは日本人の駐在員たちの間で人気と知名度が高まっていき、今度はベトナムの人たちにもその魅力が受け入れられるように。次いで外国人旅行者にも知られるようになり、Pizza 4P’sを旅の目的地としてくれる方々もあらわれるようになったそうです。
経営が軌道にのってからも、益子さん夫婦は本物志向を貫き続けました。
たとえば、チーズに関しては「2020年からは高原地帯のダラットに工房を立ち上げ、専属のチーズ職人たちを雇用し、一貫生産している。来店してくれるお客さまや社内のシェフからのフィードバックを受けて、常に改善を続けている」とのことです。
チーズだけでなく、益子さん夫婦は野菜をはじめとした食材にも徹底したこだわりを持っています。
「かねて無農薬野菜にこだわりたいと思っていたが、当時のベトナムでは有機野菜や無農薬野菜に取り組んでいる生産者が少なく、有機・無農薬農家を探すのにも苦労するような状況だった。また、どうにか仕入れることができても、品質が悪くて使えないこともしばしばあった」と振り返ります。
それでも根気強く、さまざまな農家と取引を続けた末に、同社が見出したのがダラットのティエンシンファームでした。聞けば、このファームはJICAプロジェクトで10年以上、無農薬栽培の指導を受けた実績があり、現在も農薬や殺菌剤、除草剤を一切使用していないほか、リーズナブルに高品質な食材を流通させることを目標としているそうです。
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