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ドルに代わる国際通貨の覇権をBRICSは握れるか ロシアで開催されるBRICSサミットに注目せよ

東洋経済オンライン / 2024年10月16日 9時0分

アメリカの経済制裁が続く限り、SWIFT(国際銀行間通信協会)を使ったドル決済はできないわけで、中国の元(ユアン)、ロシアのルーブル、インドのルピーなどが、BRICS諸国の国際決済通貨としての位置を取り始めたことは間違いない。

しかし、これならば中国のユアンまたはルーブルが、ドルにとって代わるだけのことであり、アメリカ支配体制が中国、ロシアの支配体制に変わるだけである。

それを避けるためにも、新しい通貨案を構想しなければならないはずである。まして相互の互恵的貿易を実現するには、一国の通貨を決済通貨にするわけにはいかない。

決済通貨の選択と安定性という問題

そこで新しい国際通貨構想が出ているのだが、それはIMF体制のような一国通貨を基軸通貨とすることではない。しかも、IT技術の発展の中、電子マネーによる決済である可能性が高い。

しかし、そのためにはブロックチェーンなどの最新技術が使われるだろうが、通貨の発行額がインフレにならない手段を構築しなければならない。

経済学の最大の難問の一つが通貨の安定である。

1844年にイギリスではピール銀行条例によってイングランド銀行券発行のための準備金規定を設けたが、それによっても通貨の過剰発行を防ぐことは容易ではなかった。

またドルと金とのリンク(1オンス35ドル)というブレトンウッズ体制も1971年にアメリカ経済の不振によって廃棄され、ドルは発行制限を持たない通貨となってしまった。

ロシアも中国も金をひたすら備蓄しているという話は、ここ10年よく聞く。金本位制に戻ることはないとしても、金の国立銀行あるいは新しい体制の通貨発行銀行の準備額の前提にすることはありえない話ではない。

いずれにしろ、新しいシステムが構築されることになれば、BRICS諸国は、ドル体制であるIMF体制から離脱することになる。2つの体制の共存が可能かどうかは、冷戦時代の米ソ対立の中で、両体制の通貨の優位性がその経済力を決めたように、ドル体制との衝突は不可避であろう。

こうした場合経済的に優位な通貨が、かつて冷戦においてドルが最終的に勝利したように、その勝利を得る。

となると、経済力の相異が決定的な衝突を生み出し、経済力があるほうが他方を屈服させ、吸収していくだろう。米ソ冷静の終結とは、ドル経済圏によるルーブル経済圏の吸収であったといえる。

経済・軍事・政治的な力はどちらに?

気になるのは現在、経済的、軍事的、政治的力がどちらに有利に働いているかである。発展途上国だとこれまで見下されてきた地域が、いつまでも弱者の立場に我慢しているわけではない。

最初に見た技術的優位が、経済的優位をつくりだし、それが軍事的優位につながり、しかも政治的にも多くの加盟国を集めつつあるとすれば、それによってBRICSは巨大な力を獲得し、西欧先進国が、発展途上国といわれた新興国に吸収されるという事態もありうるわけだ。

現在起こっているウクライナ、イスラエル問題の行方を見定めるにも、この背景にある先進諸国とBRICS諸国の対立関係の行く末を見つめる必要があるだろう。

その意味でも、カザンのBRICSサミットは注目すべきものなのである。 

的場 昭弘:神奈川大学 名誉教授

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