資本主義は今、曲がり角に来ているのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(1)
東洋経済オンライン / 2024年10月18日 12時0分
名和:世の中は今、目に見える物理的資産から無形資産へと移行しつつあります。たとえば、知識やブランドは誰が所有するものなのか。人の頭の中にあるブランドイメージはコントロールできませんよね。無形資産の観点に立つと、資本主義は変わってくるのでしょうか。
ガブリエル:最初に工場など物理的なものを資産だとする考え方を打破したのはサービス経済です。その後、サービス革命が起こりました。そして今は、AI(人工知能)の出現に象徴されるように知的革命が起きています。おそらく産業革命以来、私たちが目にする最大の経済変革でしょう。
ただし、資本主義を打破するというよりも、この新しい状況にデジタル資本主義を適応させる必要があるのだと思います。知的財産権や複製権など新しい財産の概念を開発することは重要です。そうすれば法的概念として資産計上できるようになりますから。
現状は、知識やAIをうまく測定できておらず、そこに危険性があります。私たちが直面する真の脅威は、ターミネーターに支配されることではなく、これまで見たことのないほど剰余価値生産が加速していることです。
私有財産を凌駕するという意味で、デジタル共産主義が到来すると考える人も多いのですが、それでは今日の現象を測定し、理解することができません。所有権の概念を精神的領域に正しく適合させ、人間精神という客観的存在が最高の技術インフラへと拡張していくことを認識する必要があると思います。
名和:人間中心主義の考え方がありますが、私たちは自然資産、環境資産、社会そのものを所有しているわけではありません。ビジネスのために与えられただけであって、私たちは自然に対して借りがある。そのため社会や環境から別の圧力が生じています。
資本主義から共産主義や社会主義へ、成長から反成長や脱成長へという新しい考え方もありますが、その中で資本主義はどうすれば生き残るのでしょうか。こうした外部資産をもっと充実させるべきでしょうか。
矛盾している最近の試み
ガブリエル:共有財を社会経済領域から完全に切り離して考えるのは間違いです。社会主義や共産主義を復活させようとする最近の試みは矛盾しています。なぜかというと、自然と人間の間に明確な区別があることを前提としているからです。
彼らのストーリーは、自然は共有財で、そこにある生態系は誰も管理できないし、すべきでもない。あるいは、ただ私たちに与えられているだけで、資本主義の過剰生産に脅かされている、というものですよね。そこでは自然を人間社会と対立させていますが、それは実際の生命科学の知識とほど遠いものです。
共産主義は危機対応に強いわけではない
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