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資本主義は今、曲がり角に来ているのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(1)

東洋経済オンライン / 2024年10月18日 12時0分

ガブリエル:マルクスが社会主義思想に関する論文を書き始めたのは、ダーウィンの時代ですが、私たちの科学知識は当時をはるかに超えています。

微生物学革命や地球システム科学、その他の生命科学のおかげで、自然は人間と別物だとするのは誤りだとわかっています。資本主義を再び弱体化させる共産主義的な戦略は時代錯誤で、現代の科学的知識の水準に達していません。

もちろん、共有財は存在しますが、それは共有物です。たとえば、資本主義はつねに法的、政治的な条件下でのみ展開されてきました。私有財産は社会的なもので、人がいろいろ交渉した結果であり、だからこそ保護されなければならない。

それとまったく同じ意味で、自然は長い間、人間社会の一部でした。アマゾンの先住民たちも、近代国家においても、私たち人間が海、海底、森林などを当たり前に所有してきました。

私たちが今目にしている生態系の危機は、人間が住む領域外における啓示ではなく、隠れたエージェント(行為主体)が存在しています。自由民主主義の立場から私たちがすべきなのは、共有財の概念を見直すこと。何を所有してはいけないかではなく、何を所有すべきかを考えることです。

名和:なるほど。自然や共有財を社会環境から分けて、孤島のように捉えるのではなく、人間も含めて、広大なシステムの中で捉え直す、ということですね。

ガブリエル:そうです。自由民主主義国と比べて、中国をはじめとする社会主義国や共産主義国のほうが、生態系の破壊は深刻です。自由民主主義国家は、生態系の危機を本気で解決しようとしていないにせよ、科学の知見を利用するので、危機対応に長けています。科学技術は自由民主主義の発展においてきわめて重要です。

共産主義では、科学技術は道具にすぎず、真実そのものに関心を向けません。すべて政治的なものとして捉えるからです。自由民主主義では、科学と技術は現実を見つめ、社会に取り入れるための手段であり、時には誤っていることもあると考えます。ですから、共産主義のほうが自然認識に秀でているというのは間違いで、まさに自然に対する支配関係の縮図です。

自由主義と社会主義は両立するのか?

名和:社会自由主義や社会民主主義という考え方もあります。たとえば、デンマークなどの北欧諸国は社会主義なのか、それとも、自由主義でしょうか。

ガブリエル:自由主義と社会民主主義は完全に両立できると思っています。日本もそうですが、どの自由主義の社会経済においても、社会主義は実現していると思います。19世紀の社会主義の考え方は労働者の権利を認め、資本主義の破壊的な力を安定させるために法律が必要だとするものでしたが、実際にそうなっています。

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