「日本一老いる村」の村長が訴える地方創生の現実 群馬県南牧村「コミュニティ崩壊が始まっている」
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 7時40分
群馬県南西部の山間部に、国内で最も高齢化が進む村がある。65歳以上が人口に占める「高齢化率」が日本一高いまちとして知られる南牧村(なんもくむら)だ。9月末現在の高齢化率は68.2%に上る(過疎化が急速に進む村のルポはこちら)。
2014年、民間の有識者団体が将来の若年女性の人口減少率を予想したところ、30年間で50%以下に減少する「消滅可能性自治体」として全国ワースト1位の減少率(89.9%減)となり、今年4月の同様の再検証でも同じく最下位だった。実際にこの10年ほどの間に村の人口は500人超減少し、現在は1440人にまで落ち込んでいる。
10月1日に就任した石破茂首相は初代の地方創生担当相を務めた経歴もあり、地方創生交付金の規模を倍増するなど、地方創生を加速させる方針を明らかにしている。10月11日には、自身が本部長を務める「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置した。
日本で最も老いが進む過疎地はどのような問題に直面し、今後の地方創生に何を期待するのか。南牧村の長谷川最定(さいじょう)村長(71)に聞いた。
こんにゃく芋で栄えた豊かな村だった
――村長が南牧村で過ごした70年の間に、村はどのように変わってきたのでしょうか。
【写真で見る】群馬県南牧村役場に設置された、現在の村の人口を知らせるパネル。約70年で人口は9割減少した
私が生まれた頃はこんにゃく芋の生産が非常に盛んで、高く取引されていた。戸当たりの農家収入は全国有数で相当高く、非常に豊かな村だった。
しかし1965年頃から農業の機械化が始まって品種改良も進み、値崩れが起きて、今までのように生活ができなくなった。私が大学生のときくらいから、農家を継いでもダメだということで、東京に行ったり、大会社に勤めたりと、だんだん転出が増えていった。
企業を誘致しようにも、道が非常に悪く、高速道路も完備しているような時代でなく交通網が悪くて難しかった。何とかやっている自治体と、うちみたいに人口が本当に激減しているところの違いは「地場産業」があるかどうか。でも、今から「南牧村といえば」というものを確立するのは至難の業だ。
――「平成の市町村合併」の時代には、隣町との合併の話もあったようですね。
隣の下仁田町と法定合併協議会で協議を終了し、議決して官報に載せるだけの段階までいったが、隣町で反対運動が起きた。下仁田にしてみたら、多くの貧乏人を抱えてどうするのかと。
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