上場で注目、東京メトロ「2つの新路線」の現在 有楽町線と南北線の「延伸」は何をもたらすか
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 6時30分
一方、有楽町線の延伸計画は半世紀以上前にさかのぼる。まだ有楽町線そのものが開業していなかった1972年、東京周辺の鉄道網の整備に関する答申に豊洲から亀有への分岐線計画が盛り込まれたのが最初の動きだ。同線は、地元の江東区が整備を求め続けてきた。
1982年には当時の営団地下鉄が豊洲―亀有間の路線免許を申請。この際は認可されなかったが、1985年と2000年に取りまとめられた鉄道網に関する答申にも引き続き整備方針が盛り込まれた。1988年に開業した有楽町線の豊洲駅、2003年に開業した半蔵門線の住吉駅も、この延伸線を考慮して造られている。
だが、計画が具体化することはなく、さらに2004年に東京メトロが発足すると、同社は当時建設が進んでいた副都心線(2008年開業)を最後に、新路線の整備は行わない方針を示した。
先行きが不透明になる一方、江東区は2007年度から、豊洲―住吉間の延伸について独自に調査を実施。路線の建設や保有を区などが出資する第三セクターが担い、運行を東京メトロが行う上下分離方式での整備について検討したほか、2010年度には建設基金の積み立ても開始した。
整備に向け大きく弾みがつくきっかけとなったのは「豊洲市場の開設」だ。都は同区内への豊洲市場開設に際して、区と「土壌汚染対策」「交通対策」「新市場と一体となったにぎわいの場の整備」の3つの約束を交わした。この交通対策の柱が有楽町線の延伸で、都は2018年度中に整備スキームを示すとしていた。
だが、都が示したのは「東京メトロによる整備、運行が合理的」とする内容だった。東京メトロが新路線の整備を行わない方針を示していた中でのこの内容に、当時取材に応えた区の担当者は「事業主体や財源の調整もしておらず、スキームではないと認識している」と述べ、区側の都に対する不信感をにじませた。
新線と上場は「一体不可分」
新線の整備問題とともに、大きな課題となっていたのが東京メトロの上場だ。国は、東京メトロ株の売却益を東日本大震災の復旧・復興のために発行した復興債の償還費用財源に充てることを法律で定めている。国が売却を急ぎたい一方、都は地下鉄整備などのために東京メトロへの影響力を保ちたいとの考えがあり、思惑の違いから上場に向けた動きはなかなか進まなかった。
この2つの課題を一体にして前進させたのが、前述の2021年の答申だ。同答申は新線について「東京メトロに事業主体としての役割を求めることが適切」としたうえで、経営に悪影響を及ぼさないよう、国と自治体が事業費の約6割を負担し、残りは「都市鉄道融資」の制度により東京メトロがまかなう方策を示した。
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