山形市が「ラーメン日本一」になった納得の理由 古き歴史と新しい店が一体に、独自の多様性が形成
東洋経済オンライン / 2024年10月20日 8時30分
15歳の頃に山形市にあった「五一ラーメン」の職人の姿に惚れ、3年間修業。その後、名店「寿々喜そば屋」で13年間修業し、2008年に独立した。全国的にも珍しいそば屋出身のラーメン店主である。
「私が店をオープンした頃は、山形が『ラーメン王国』だということは認識したこともなく、全国から山形にラーメンを食べに来てもらおうとは考えたこともありませんでした。
やはりきっかけはコロナの大打撃で、この時に山形のラーメン全体を盛り上げる方法はないかと考え始めたのです」(鈴木店主)
コロナ禍で営業が難しくなったこと、さらにはラーメン消費量で新潟市に王座を明け渡したことがきっかけとなり、山形市がラーメン日本一を奪還するための活動がスタートしたのだ。市内のラーメン店4店が発起人となり、協議会を発足させ、山形市に協力を仰ぎに行った。
市が主導してラーメンを使って県外から観光客を誘致しようという動きがスタートし、市長が2月8日を「山形市ラーメンの日」に制定するなどした。
山形市の活動を今度は山形県全体に広げるべく、「新旬屋 本店」の店主・半田新也さんを中心に動き出している。
「山形に『ラーメン王国』という言葉はもともとありましたが、県内にいると山形市、赤湯、酒田、鶴岡など各地に有名なラーメンがあるので、これで十分だと思ってしまっていました。ただ、県外のイベントに出たことでまったく景色が変わりました。
『山形ってラーメンあるの?』と言われたこともあり、大変ショックを受けて、これからは山形県全体をラーメンで盛り上げていこうというマインドに変わったんです」(半田店主)
“ご当地ラーメン日本一”に
半田さんが2012年から全国のラーメンイベントに出店して山形のラーメンをPRし始めると、半田さんに続き、鶴岡市の「鶴岡麺武士会」や酒田市の「酒田のラーメンを考える会」がイベントに出店し、少しずつ県外への動きが広がってきた。
酒田ラーメンは昨年行われた「日本ご当地ラーメン総選挙」で“ご当地ラーメン日本一”に輝いた。
「今年3月にはラーメンとそばの合同イベントを山形市で開催しました。山形のラーメンはもともとおそば屋さんから始まったところも大きく、県は、山形のラーメンとそばを観光資源としてPRしようと、『ラーメン県そば王国』の商標登録を特許庁に出願しています。
これからは県、市どちらの立場からもどんどん山形のラーメンをPRしていきます」(半田店主)
まさに温故知新。「老舗があるからこそ今がある」とそれぞれの店主が口にする。
古き歴史と新しいお店が一体となって山形のラーメンを今後も盛り上げていってくれたら嬉しい。
井手隊長:ラーメンライター/ミュージシャン
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