補聴器と何が違う?「AirPods」聴覚サポートの特質 アップルが示した革新的アプローチを徹底解説
東洋経済オンライン / 2024年10月21日 22時0分
高価な補聴器が不要になる機能をアップルが開発したと伝えられているのも目にするが、ここには誤解があると思う。
まず、アップルのヒアリング補助は、症状の重い難聴に対しては十分に機能しない。
軽度難聴 とは26〜40dBHLの音が聞こえない場合で、小さな音や囁き声が聞き取りにくいものの、静かな環境での会話には、ほぼ問題がない。中等度難聴は41〜60dBHLの音が聞こえない状況を示す。中程度難聴では通常の会話音が聞き取りにくく、集団での会話や、騒がしい環境での聞き取りが困難となる。
アップルのヒアリング補助がサポートできるのはここまでだ。また、AirPods Proは充電なしに6時間までの連続駆動となっており、丸1日サポートはできない。
つまり、補聴器を置き換えるものではない。補聴器をまだ入手していない、入手することは検討してるが踏み出していない、あるいは補聴器が必要なほどではないが、聴覚的に不安があるユーザにとって、有益な機能となる。
筆者はむしろ、聴覚に対して不安を覚えながらも補聴器を使っていないユーザーが、この機能に触れることによって、医師に相談し、補聴器の利用へ進むきっかけになると感じた。
明瞭にコンテンツを楽しめる?
ここまで読んでいただいた読者には理解いただけると思うが、このヒアリング補助に関しては補聴器との競合はないと言っていい。もっと手軽なシーンにおいて、聴覚に不安のある人が大切なメッセージをより明瞭に聞き取れたり、映画のセリフが聞き取りやすいといった、ライフスタイルの質を高めるものになるはずだ。
実は筆者もテストを行ったのだが、両耳とも4dBHLとの検査結果であり、補助の必要なかったため、どれほど映画や音楽を楽しむ上でのクオリティーの違いがあるのかはレポートできない。
しかし、ある程度範囲が決められているとは言え、聴覚に関する問題をサポートできる上に、デジタルコンテンツを楽しむ上でより豊かなコンテンツ体験を得られるという意味で、医療機器としての補聴器にはない別の価値があると思う。
難聴ではないが、ステロイド治療の影響で聴覚に一定の問題を抱えている知人に試してもらったところ、ヒアリング補助を行った状態で映画を見たら、セリフなどが一段とクリアに聞こえたと喜んでいた。
聴覚を発端とした疾患の予防に
世界には15億人の難聴者がいると言われているが、そのうち10億人以上は軽度から中等度の難聴だ。言い換えるならば、その10億人を、何らかの形で支援できる可能性があると言えよう。
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