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介護保険を「撤退戦」から守るたった1つの方法 一段と強まる給付削減と介護報酬の伸び抑制

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 8時0分

次の文章もあります。

池上彰氏と佐藤優氏の対談『日本左翼史』という3冊からなる本があります。社会党、共産党などと関係のある左翼の人たちについて論じられた対談です。そのなかで興味深いのは、この国では、左翼の人たちが、歴史上、一度も再分配(社会保障)のための財源調達の話をしてこなかったことです。

国際的な常識の世界では、「社会民主党」に代表される左翼政党は、市場による所得分配の有様を否定的に見て、税や社会保険料の引き上げと、それを財源とした給付によって分配のゆがみを正そうとします。ところが、この国の左翼は、税や社会保険料の引き下げを繰り返し言ってきただけでした。

日本の福祉は、一体誰が整備してきたのだろうかというのは、答えるになかなか難しい問いです。2009年5月、麻生内閣時の与謝野馨財務大臣は、国会での民主党峰崎直樹参議院議員の質問に、「(自民党は)北欧型の社会民主主義に近い政党であったというのが私の認識でございます」と答えています。

そして与謝野さんは、後に菅直人内閣で内閣府特命担当大臣として呼ばれ、社会保障・税一体改革、すなわち市場による所得分配のゆがみを正していく政策を牽引していきました。時代が変わっても、適正な分配政策を行うためには財源が必要なことに変わりはありません。

この文章の最後は、次で終えています。

(第7回こども未来戦略会議(2023年10月2日)での発言)

現代の福祉国家、再分配国家がやっていることは、みんなの所得をプライベートに使ってよいお金と、連帯してみんなの助け合いのために使うお金に分けて、後者をいま必要な人に分配し直しているだけなのです。だから、私は負担と呼ぶのにもどうも抵抗があるわけです。

再分配というのは戦争で負けたときに賠償金を求められる負担をみんなでどうするかというような話ではなく、給付があるわけです。給付を行うためにお金を先ほどの金庫、貯金というか貯金箱みたいなところにお金を預けて必要な時に利用していくわけですけれども、その制度を作ったほうが確実にみんな生活が楽になります。

政府は、その年に生産された付加価値(所得)を、いますぐに必要でない人からいますぐに必要な人に分配し直している(所得を再分配している)だけであり、そうした連帯、助け合いの仕組みが社会保障であるという理解が広まるかどうか。

社会保障を中心とした再分配国家を五公五民の政府に例えるおかしさに気づく人がどれほど多くなるのかどうか。そうしたことに、いまあるフクシを超えて、新しい世界を切り拓くことができるかがかかっている――そのようにも思えます。

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