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介護保険を「撤退戦」から守るたった1つの方法 一段と強まる給付削減と介護報酬の伸び抑制

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 8時0分

メインは、1人の人間の時間的、保険的再分配です。

ちなみに垂直的再分配がメインの生活保護は社会保障給付費の3%程度です(「社会保障は金持ちから貧困層への再分配にあらず」)。

次のスライドでは、家計における収入と支出のギャップを生む原因となる「支出の膨張」と「収入の途絶」の話を書いています。

この図は、20世紀初頭にイギリスで行われた貧困調査の結果ですが、貧困に陥るのはライフサイクルがあり、それは子どものとき、子育て期、そして老齢期などが、この図のように可視化されることになります。

こうした生活リスクに対して賃金という市場が家計に所得を分配するシステムはなかなか対応できず、こうしたリスクをきっかけに人は生活が苦しくなり、貧困に陥っているという、「賃金システムの欠陥」が、広く認識されることになります。

この賃金システムの欠陥を補う制度として、消費の平準化を果たす労使折半の社会保険制度が普及してきたわけですが、この国では、長く、子ども子育て期の「支出の膨張」と「収入の途絶」に対応する再分配制度が待望されていました。

子ども・子育て支援金制度の位置づけ

そうした中で今年、子ども・子育て支援金制度として、賃金システムの欠陥を補う他の社会保険制度と同じ方式で、新たな再分配制度が誕生したわけですね。

1つコメントしておきたいのは、次のスライドにあるように、今回の子ども・子育て支援金の法的性格は介護保険料と同じで、医療保険料とは独立して徴収されます。

介護保険料を医療保険料の流用という人はいないと思いますが、昔から年金をはじめ制度の理解が苦手な人たちが揃って、今回も医療保険料の流用といって騒いでいましたし、メディアはファクトチェックをすることもなく、彼らの論を報道していました(「子ども・子育て支援金と風評被害」)

社会保険は、賃金システムの欠陥を補う賃金のサブシステムで、保険料の賦課ベースは、医療保険が最も広範囲です。全世代型社会保障という「給付も支えるのも全世代で」という理念に基づいて、今回の子ども・子育て支援金の賦課ベースとして医療保険料の賦課ベースが選ばれたわけです。

この観点からみれば、高齢期における支出の膨張が必然である介護保険だけが、40歳以上ということの方がおかしい。

年金も医療も介護も、そして子育ても、賃金システムの欠陥を補う賃金のサブシステムとして制度ができているわけですから、普通に考えれば、介護保険もドイツや他の国のように医療保険と同じ賦課ベース、あるいは年金のように20歳から被保険者となる制度にする方が自然です。

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