「憎悪」と「嫉妬」は、どちらが"よりネガティブ"か 「プラスの効果」がまったく期待できない感情
東洋経済オンライン / 2024年10月23日 16時0分
念のために言うと、老師が「頭にくる」のは個人的なことではありません。この老師は、寺で戦災孤児の救済活動をするなど、ボランティアの草分けのような活動を続けた人です。
彼の怒りは、社会的な問題や悲惨な状況にある人たちに対して、世間があまりにも無関心だということに向けられたものです。老師にとってこの怒りは重要な意味があり、また、これまでの活動を支える大事なエネルギーにもなってきたのでしょう。
そんな「怒り」であれば、捨てる必要はないと私は思います。その感情が激したときに、心の枠の中からこぼれないようにすればいいだけの話です。しかし一般的に見れば、怒りが、手こずる感情のひとつであるのは間違いありません。なにしろ、90歳の禅僧まで、捨てられないと言ったのですから。
「もう怒らないと決めたのに、小さなことで部下を叱ってしまうのです」
「パートナーの言動に腹が立ち、怒りが溜まっていつもイライラしています」
こんな悩みをよく聞きます。ついカッとなってしまうのは、「怒ればなんとかなる」といった妙な思い込みがあるからです。冷静になれば、いくら怒鳴っても、相手は畏縮するか反発するだけだとわかるでしょう。
怒る行為に効用があるとしたら、ただひとつ。「問題がここにある」と過激に指摘することだけです。
しかし、怒りにまかせて問題を指摘したところで、相手は決して納得しません。また、問題が解決することもありません。
もし、誰かがあなたに怒りをぶつけてきたときは、「この人はなんの問題を指摘しているのだろう」と考えれば、それで十分です。
たとえば、上司が「結論から言いなさい!」と部下を叱ったとします。それは、「報告がまわりくどい」と問題を指摘しただけです。だから、叱られたほうは、次からは、端的に現状報告すればいいわけです。短気な上司がどんなに激昂しても、「この人は、怒れば問題が解決すると思っているのだな」と、指摘された問題だけ捉えて、余計な怒りは受け流せばいいのです。
そもそも人が怒るのは、「自分が正しい」と信じているからです。しかし、その「正しいこと」すらあいまいなものであって、変化するものです。それがわかっていれば、一時的にムッとすることがあっても、さほど激しい怒りにはならないはずです。
「自分の言っていることはどんな場合も正しい」と思い込むのは、仏教からもっとも遠い感情です。だから、「怒る」行為をとても嫌います。苦しみを生み、悟りを妨げる3つの毒「三毒(さんどく/貪、瞋、痴=貪り、怒り、愚かさ)のひとつに数えられるほどです。
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