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倫理資本主義の下でビジネスは成り立つのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(2)

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 10時40分

これはいわば、ある種のダウンレギュレーション(下方制御)です。私の考える倫理資本主義はアップレギュレーション(上方制御)です。

倫理的な行動は収益源になるのか?

名和:規制というと、ある行動を禁じるダウンレギュレーションがすぐに思い浮かびますが、よりよい行動を促進するアップレギュレーションだというのは、興味深いですね。倫理的な行動はビジネスではコスト増につながりそうですが、収益源となるのでしょうか。

ガブリエル:倫理資本主義では、経済に関連する事実を突き止められるようになるので、たとえば、エネルギー問題を解決した人はきっと大金持ちになるでしょう。

イーロン・マスクは善人でないかもしれませんが、経済的に成功している理由の1つは、とりあえずEV(電気自動車)という倫理的製品を見出したからです。EVは完璧ではないし、マスクは経済の神や仏でもありません。けれども、倫理的な解決策を見つけたから大きな利益を手にしました。

彼の意図は、単に儲けることにあったかもしれませんが、彼の初期のプロダクト(ペイパル)でさえ、決済をシームレスにするなど倫理的側面があったから、あれだけ急成長を遂げたのです。こうしたメカニズムが倫理資本主義の中心にあります。

過去の資本主義を創造的に破壊する

名和:資本主義はイノベーションの原動力になります。ガブリエルさんはケインズよりも、ヨーゼフ・シュンペーターがお好きなのですね。このドイツの哲学者、社会思想家とでも呼ぶべき人物をどう思っていらっしゃいますか。シュンペーターの説くイノベーションを再評価すべきでしょうか。

ガブリエル:そのとおりです。資本主義について私が開眼した瞬間は、あるスイス人の同僚から、資本主義はシステムではないかもしれないと指摘されたときです。

誰もが資本主義は経済システムだと言っているのに、どういう意味なのかと聞き直すと、「シュンペーターを読みなさい」と言われました。それで彼の大著『資本主義・社会主義・民主主義』に立ち返ったのです。

名和:彼の最後の著作ですね。お話を聞きながら、私もそれが頭に浮かびました。

ガブリエル:皮肉にも、資本主義には未来がないといった有名な言葉が出てきますよね。彼が言おうとしているのは、資本主義は1つのシステムとしては存在しないことだと思います。

その意味で、資本主義には未来がない。資本主義がすることとして、創造的破壊という彼が提唱した概念は有名です。創造的破壊、つまり、イノベーションのことですが、単に何かを破壊することではなく、そこで実際に破壊するのは、過去の問題解決手法です。

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