倫理資本主義の下でビジネスは成り立つのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(2)
東洋経済オンライン / 2024年10月23日 10時40分
たとえば、企業が客観的に測定可能な形でよい行いをしたならば、減税することなどが考えられます。たまたま近隣の人々によいことをするのではなく、社内に客観的に測定可能な道徳善を実践できるエンジンがあるとしましょう。
これは正の外部性につながります。それで減税ができ、正しいことが行われる。それが真の利益であり、その活動に従事する社会民主主義的なインセンティブになるでしょう。
名和:ドイツや日本はそういう考え方を取り入れたとしても、一方で真の利益という概念がどこにもない国もあります。真の利益に対して悪い利益の考え方もある世界で、異なるゲームが展開される中で、私たちはどのように戦っていけばよいのでしょうか。
ガブリエル:経済学で有名なゲーム理論では悪役が常に勝つとされていて、数学的には間違いないようです。しかし、それに対する解決策として有名なのが法律です。悪役の問題で世界が崩壊することはありません。なぜなら、経済は法律や政治の領域から完全に切り離されて動くシステムではないからです。
国民国家を再評価する
グローバル化した経済でも同様です。グローバル・コーポレートファイナンスは法律から自由だという俗説もありますが、それはありえません。それでは私有財産制度がなくなってしまいます。何らかの法律の仕組みがなければ、市場は成り立ちません。
グローバルな領域における悪役問題の解決策は、国民国家だと思います。その事実によって、私たちは保護主義に陥ることなく、経済を守る政策を運用することができます。それは保護主義ではなく、よい行いをする可能性を守ることです。テロリストなどの非自由主義的な手段とはまったく違います。
名和:倫理資本主義という新しい概念についてわかってきました。環境、政治、技術におけるいろいろな変化を考えると、私たちが倫理資本主義について真剣に考えなくてはならないことは明らかですね。
※第3回は、10月29日を予定しております。
(翻訳・構成:渡部典子)
マルクス・ガブリエル:哲学者、ボン大学教授
名和 高司:京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋ビジネススクール客員教授
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
日本を「創造的破壊」ができない国にした「方針」 いま最も必要な「天才シュンペーター」の思想
東洋経済オンライン / 2024年11月19日 10時30分
-
「超富裕層に課税せよ」ブライアン・イーノ、経済格差と政治腐敗に物申す
Rolling Stone Japan / 2024年11月18日 7時30分
-
最高哲学責任者(CPO)で会社はどう変わるか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(4)
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 13時0分
-
日本企業は倫理資本主義を実践できるのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(3)
東洋経済オンライン / 2024年10月29日 10時30分
-
政権選択を前面に 沖縄1~4区の16候補、主張を貫く[衆院選2024]
沖縄タイムス+プラス / 2024年10月27日 3時57分
ランキング
-
1「京急」「京成」に照準定めた旧村上ファンドの思惑 2006年の「阪急・阪神合併」の再現を想起
東洋経済オンライン / 2024年11月25日 7時50分
-
2自然界最強「ミノムシの糸」を製品化、スポーツ用品や自動車に活用へ…興和「化学繊維に代わる存在に」
読売新聞 / 2024年11月25日 10時50分
-
3"退職代行"を使われた上司「信用ダウン」の悲劇 多いのは営業、職場に与える「3つの影響」とは
東洋経済オンライン / 2024年11月25日 8時30分
-
4「寿命半分」を掲げた電車、登場30年超で〝再就職〟できる秘訣は? JR東日本209系、置き換え用車両も判明 【鉄道なにコレ!?】第68回
47NEWS / 2024年11月25日 10時0分
-
5ホリエモン「オルカンを買うよりもずっといい」…上場企業4000社から"優良銘柄"を見抜くシンプルな方法
プレジデントオンライン / 2024年11月25日 8時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください