「NHK"旧ジャニ起用"」への批判がピント外れな訳 賛否の「NHKスペシャル」があぶり出した"本当の責任"
東洋経済オンライン / 2024年10月23日 9時10分
10月16日、NHKは旧ジャニーズ事務所から事業を引き継いだ、STARTO ENTERTAINMENT(以下STARTO)所属のタレントの起用を発表した。そしてその4日後にNHKスペシャル『ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像』を放映。このタイミングでの放映は、さまざまな臆測を呼んだ。
【写真】「アイドルのような微笑み」NHKが報じた、若かりし日のジャニー喜多川氏
番組が放映された後も、番組の内容を評価する声が出ている一方で、NHKがSTARTOのタレントを起用することへの批判、ジャニー喜多川氏の性加害を黙認してきたNHKに対する批判の声が増幅される結果にもなっている。
NHKが批判を受けるのはやむを得ない点はあると思うが、批判の論点がズレているようにも見える。
「NHKスペシャル」で再燃した疑問
NHKスペシャルを視聴していない人のためにポイントをまとめておこう。
番組の中では、故ジャニー喜多川氏の生い立ちから性加害行為に至る過程、その姉の故メリー喜多川氏が弟の行為を知りながら、メディアに圧力をかけて隠蔽を図る実態が描かれていた。ただ、これらの点については既知のことが大半で、新しい情報は少なかったように思う。
本番組で、主に物議を醸したのは、下記の点である。
1. SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)補償本部長の被害者遺族に対する心ない対応、特に録音された電話でのやり取り
2. NHKの元理事で、ジャニーズ事務所顧問を経て、現STARTOに所属する顧問への突撃インタビュー
3. このような番組を放映しながら、NHKがSTARTOの所属タレントを起用することへの違和感
4. NHK自身の、過去の旧ジャニーズ事務所との関係が十分に検証されていないという懸念
NHKが1、2のような突っ込んだ報道をしておきながら、STARTOのタレントを起用することに対して、視聴者の多くは違和感を覚えたように見える。
実際、この点に関して、「ダブルスタンダードではないか?」という批判も見られたが、制作と報道の対立、あるいは上層部と現場との対立があるのではないか? といった意見が見られている。
筆者自身は、NHK局内で摩擦や対立があること自体は、否定的なことではないと考えている。NHKに限らず、多くのテレビ局において、制作側の利害が優先され、旧ジャニーズ事務所の不都合な報道が制限されていたことを考えると、むしろ進歩していると見ることもできる。
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