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セブン、苦戦報道で「不親切なレジ」批判沸騰の訳 「高齢者泣かせ」「冷たい接客」との声…一体なぜ?

東洋経済オンライン / 2024年10月24日 8時30分

こうした容器の返却口は「ゴミ箱」で、この事例に対してネット上ではこんな意見があった。

「店内でもすべてプラ容器の提供になっている店舗ははじめてでした。洗い物がなくなり合理的なのかもしれませんが、ひどい扱いだなと思いました。食事における器の重要さを否応なく意識させられます」

「餌を出された気分です。紙の食器で食べるご飯がちっとも美味しく感じられません。すき家、テーブルがある牛丼屋で素敵だと思っていたのに。もう使いません」

セルフレジと同様、「接客の温かみがない」と語る声が多く見られたのである。

ディストピア容器については、それが店側の業務を軽減し、ひいては「働き方改革」につながることから、非常に意義のある取り組みなのは間違いない。

しかし、日本に牛丼屋をはじめとするチェーンストア・ファーストフードが根付いてから50年ほどが経過し、そこは「ただモノを食べる空間」ではなく、「愛着を持った場所」になってきた。

人文地理学者のイーフー・トゥアンは、ある場所を捉えるとき、数字上のデータだけを見るのではなく、そこにまつわる人々の「情感」や「愛着」までをも捉えなければならない、という。まさに経営でも同じことが言えるだろう。(イーフー・トゥアン「空間の経験」/1993年・ちくま学芸文庫)

ある場所を人が使うのは、合理的な理由だけで片付けられるものではない。つまり「自動化」だけでは解決できない、もっと情緒的なものも絡んでくる(まさに「人の手」だ)。それを踏まえた施策が求められているのではないか。ディストピア容器の件はこれを端的に表している。そして、それはセブンの半有人レジでも同じだ。

ファンの心を繋ぎ止めつつ、合理化を進められるか?

冒頭で示した通り、セブン苦境の原因は北米事業の躓きにあり、こうしたレジの問題は直接の原因ではない。しかし、重要なのは、そこに使いにくさや「人の温かみがない」と感じる人々がいること。

ただ、現在はDX化への変化の途中で日本全体の人口も減少している。過剰なサービスをし続けることは難しくなるし、一歩間違えばそんな要求は「カスハラ」案件にさえなりかねない。「温かみを」といったところで、物理的にそれが不可能になる時代が到来するかもしれない。それに、高齢者も徐々にセルフレジの方式に慣れていくのは間違いない。

そんな中、企業として、どのように「合理化」と「人の手」のバランスを取っていくのかが問われているのだろう。

逆に、今回のセブンのレジに対する反応をみていると、その「合理化」と「人の手」のバランスを取るのに失敗してしまったのかも?とも思えてくるのだ。

前回の記事を読む:セブンの「上げ底弁当?」が今また"猛烈批判"の訳 値上げによる客離れを恐れ、ファン離れが発生か

ちなみにセルフレジはこんな感じ

谷頭 和希:チェーンストア研究家・ライター

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