プロ野球は「国民的娯楽の王様」というフェイク 実は、日本のベースボールは衰退の危機に突入
東洋経済オンライン / 2024年10月25日 12時0分
「青少年の刑法犯罪は増加の一途」
「生活保護費の不正受給が蔓延し財政が逼迫」
もっともらしく聞こえますが、これらはフェイクです。気がつけば、日本の政治や社会を考えるための基本認識に、大中小のフェイクとデマがあふれかえっています。
「『世界は狂っている』という大雑把で切り分けの足りないペシミズムに陥らないことが大切」と述べるのは、政治学者の岡田憲治氏。大中小のフェイクについて考えることをスイッチにして、この世界を1ミリでも改善するための言葉を共有する道を探そうと企んで執筆したのが『半径5メートルのフェイク論「これ、全部フェイクです」』。今回は、日本の野球にまつわるフェイクについて考えてみたい。
最古のプロスポーツがマイナーになる可能性
日本に定着して100年を超えるベースボールが、2500万人を超える観客動員数(2023年)の水面下の川底に、未来の衰退兆候を見せています。尋常ならざるベースボール・ファンである私には、そう見えます。
サッカーに続いてバスケットボールや卓球がプロ化して、ラグビーも世界水準の選手がたくさんトップ・リーグにやってきて、もはや最古のプロスポーツは、国民的娯楽(national pastime)ではなく、数あるスポーツ競技のひとつとして、将来的にマイナーとなる可能性もあります。
サッカーは1993年のプロ化以降、紆余曲折はありましたが、確実に地域社会に根をはり、10チームから始まったJリーグのチーム数は、今日下位リーグを含めて60になりました。
成功の理由は、全国統一の指導のコーチング・ライセンス制度が確立していること、リーグに加盟するために必ず「地域スポーツ振興活動」と「ユース育成システム」をもつなど、厳しい運営基準が義務づけられたことなどです。今や、小・中学校レベルから「経験したことのあるスポーツ」として、ベースボールを凌駕しています。
スーパーエリートの集団「プロ野球」
とは言え、のべ数でも国民の4人に1人をスタジアムに呼び込むプロ野球の華やかさは失われていません。緑の芝生でプレーする選手たちは文字通り「超人」です。
そして、それをつくり出すノウハウも確立しています。小中学生レベルからリトル、シニア、ボーイズなどの各種リーグがあり(いずれも硬式ボール)、激しい競争を勝ち抜いた天才少年たちが最も甲子園大会に出場しやすい環境を基準に、郷土の代表という建前とは無関係に地方に散り、春と夏の約2週間に大メディアの関心を受けるために全国大会への出場を目指します。
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