「事業撤退→年2000万個」チーズデザート成功の訳 ひとりの社員の熱意が、会社を動かした
東洋経済オンライン / 2024年10月25日 8時40分
それを証明するように、チーズを使ったデザートの市場の売り上げは、QBBが8割を占めている。競合は、チーズのデザートではなく、アイスやケーキだと位置づけているそうだ。
そんなチーズデザートが誕生したのは2009年のこと。発売後すぐさま人気に火がつき、ここ5年で売り上げは1.6倍に成長した。2021年には、年間2000万個の出荷数を突破し、同社の屋台骨を担いうる商品になりつつある。
このチーズデザートシリーズ誕生の裏には、片山和子さんという、一人の女性開発者の情熱があった。
六甲バターがはじめてデザート事業を開始したのは1982年。カップ入りの「レアチーズケーキ」を発売したのが皮切りだ。非常に評判となり、当時学生だった片山さんはこのデザートのとりこになったそうだ。そして、「自分もぜひ開発に関わりたい」と、大学卒業後に六甲バターの門を叩く。最終面接では自らチーズケーキを焼き、役員たちに「食べてください」と配ったというからその熱意たるや。
「ちょっと変わった子やけど、面白いなあ」
役員たちをそう唸らせたという逸話は、今も社内で語り継がれている。
強い熱意を買われて入社した片山さんは、1988年、レアチーズチルドデザートの後発として誕生したカップデザート、「ベイクドチーズケーキ」の開発に携わる。2007年には改良版を発売し、売れ行きは順調。夢が叶った瞬間だった。
ところがその矢先、青天の霹靂となる出来事が起こる。社内的な事情で、デザートの販売が一旦ストップしてしまったのだ。そして間もなく、カップ入りデザート事業からの撤退が決定した。
嘆き悲しんだ片山さんは、「カップ入りのデザートでなくても、ほかの方法でチーズケーキの味わい、おいしさを提供し、お客様に喜んでもらえる方法はないか」を考えはじめる。そこで目をつけたのが6Pチーズだった。
「丸い形は、ホールのチーズケーキに。1ピースは、それをカットしたようにも見える。それなら、これをチーズケーキにできるのでは……」と考えた片山さん。6Pチーズと同じ設備を使えば、初期投資が少なくて済むという狙いもあった。
開発部長に直談判すると、「それだけ言うなら」と許可が出る。しかし、開発は簡単ではなかった。6Pチーズはアルミ箔にチーズを高速充填するので、糸を引くと、外側を汚してしまうリスクがある。そうならない性質と、おいしさ、なめらかな口溶け、上品な味わい。相反する条件をクリアしなければならなかったからだ。
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