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「事業撤退→年2000万個」チーズデザート成功の訳 ひとりの社員の熱意が、会社を動かした

東洋経済オンライン / 2024年10月25日 8時40分

筆者も食べてみたが、酸味のあるフランボワーズとライチの爽やかさ、鼻に抜けるバラの香りが三位一体となった味わいは、まさに極上スイーツ。口どけのなめらかさと合わさって、チーズとは思えないリッチな食体験だった。

2.開発者による社内営業

チーズデザートは他のチーズと同様、売り場も開発されている。元々チーズデザートの棚などなかったところに、営業マンが、バイヤーさんや懇意にしている流通企業を説得し、突破口を開いていったそうだ。置けばどんどん売れ、その実績と評判から、地道に販路を広げていったという。

現在は、関西の大手スーパーには全種並んでおり、全国チェーンの大手スーパーなどにも、比較的種類が多く並んでいる。また、売り場が限られたスーパーでも、2~3種は置いてくれているところが多いそうだ。

営業マンがここまで売り込んでくれたのは、開発者が情熱を持って「社内営業」をした結果だという。前編でも少し触れたが、六甲バターでは新製品の発売に当たり、開発者とマーケティング部、営業本部の企画部門担当者が全国の支店を回り、対面で商品説明を営業マン向けに行う。片山さんも、営業マンがスーパーのバイヤーなどを説得するためのデータを携えて全国を回り、丁寧に説明した。質問にも、真摯に答えた。

「フェイス・トゥ・フェイスで、一方向ではなく双方向にコミュニケーションをとる形での説明を、支店ごとにしていったのです」(黒田さん)。さらに、プロモーションのための販促ツールも片山さんが用意したというから驚きだ。

このスタイルがあるからこそ、営業マンは自信を持って売り込むことができ、これまでなかった商品棚を獲得するなど、やりがいも感じられたのだろう。

「後は頼む」という思いを伝えたい

片山さんに限らず開発チームには、そこまでやってしまう情熱を持った人がほとんどだそうだ。メンバーは農学部や食品化学系の大学院を卒業した20~30代の若手社員が中心で、若手でもいきなり責任のある商品の開発を任される。

何もわからないところから何度もビーカーテストをして、製造ラインの人々に頭を下げ、やっと上市した商品は自分の子供みたいなもの。すると、「世に出ていくのを見届けて、育ててくれる人たちに、後は頼むという思いを伝えたい。行って話したい」と自然に思うのだそうだ。

このように、若いうちから開発から販売までの全プロセスを見られる環境は、「仕事の自分ごと化」や「他部門を想像して連携できる姿勢」など、中編で紹介した、アメーバ経営の良さともリンクしている。

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