福島原発事故、「現代の田中正造」は何を訴える 1審だけで9年、「井戸川裁判」傍聴記(後編)
東洋経済オンライン / 2024年10月25日 7時40分
――あなたの現在の生活状況を教えてください。今、どこで生活していますか。
この事故の賠償は国の避難指示と連動しており、基本的に避難指示が解除されれば、それ以降は支払われない仕組みだ。この避難指示(および避難指示解除)の基準が年間20ミリシーベルトで、事故から約6年が経っても20ミリシーベルトを下回らない地域は「帰還困難区域」とされる。帰還困難なので、戻ることを前提とする「避難」として国や東電は扱っていない。
被災者による賠償の請求には、①直接請求、②ADR(裁判外紛争解決手続き)、③損害賠償請求訴訟――の3つの経路がある。井戸川は国が定めた中間指針を完全否定して訴訟を起こしており、直接請求をしていない。
井戸川が町長を辞めて12年近くが経った。日々の生活費以外に、埼玉県の加須駅前に「東電原発事故研究所」と称する事務所を構え、原発事故に関する書籍を片っ端から取り寄せている。それらの原資はどこから出ているのか。井戸川は明かさないものの、おおよその察しはついていた。井戸川の〝兵站線〟を東電の弁護士は容赦なく攻め立てた。
井戸川を貶める東電代理人弁護士の尋問
――町長を退職した後、日々どのように過ごしていましたか。
「裁判の準備をしていました」
――仕事はしていなかったのでしょうか。
「やっていません」
――ふーん、そうですか。これは株式会社〇〇の東京電力への損害賠償の請求書です。給与受給者のところにあなたの名前があります。給与支払者はあなたの奥さんで、平成25(2013)年2月の(町長)退職の日以降、支払いが開始されている。〇〇の仕事はしていないのでしょうか。お答えください。
「〇〇としての訴訟準備中です」
――〇〇の株式はあなたが100%お持ちですね。
「はい」
――〇〇は裁判外で東京電力に損害賠償を請求して賠償金が支払われている事実はご存じですね。
「(会社を継いだ)息子が言わないので全容は知りませんが、受けているのは知っています」
東電の代理人弁護士はさらに攻め立てた。
――〇〇は震災後の双葉町の復興事業もしていますね。
「しています」
――加須市内にある〇〇の持ちビルをあなたは事務所として借りていますね。
「まあ、住まいも兼ねています 」
――〇〇はこのビルでどのような事業をしていたのかお答えください。
「私の希望としては、双葉町から〇〇を引き上げたかった。息子の将来を考えたときに汚染のひどいところに置いておきたくなかった。だけど息子は双葉町の地元を守るという思いが固く、いさかいがあって困っています」
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