アメリカのインフレは再び深刻化する懸念がある 当局も市場も楽観的で、今後は警戒が必要だ
東洋経済オンライン / 2024年10月26日 20時0分
アメリカのインフレは本当に収まったのだろうか。
9月17~18日の両日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、当局は0.5%の大幅利下げに踏み切った。その際、多くの市場関係者は、今後の懸念材料は雇用や景気の落ち込みであり、インフレは既に過去のものになったと考えたことだろう。
ジェローム・パウエル議長をはじめ、連邦準備制度理事会(FRB)の高官も、その後の講演などで、0.25%ではなく0.5%の利下げに踏み切ったのは、主にインフレが落ち着いてきたことが理由であり、景気は依然として底堅く推移していると発言している。FOMCやその後の一連の発言などで、景気の落ち込みは限定的で、インフレ懸念だけが後退するという、「アメリカ経済のソフトランディング」が実現するとの楽観的な見方が強まったのは間違いない。
再び長期金利は4%を突破
しかしながら、10月4日に発表された9月のアメリカの雇用統計を受けて、状況は少し変わってきたようだ。同統計では非農業雇用数が前月比25万4000人の増加となり、市場の事前予想を大幅に上回る伸びとなったほか、失業率も4.1%と、やはり前月の4.2%から低下した。
これは景気や雇用は緩やかに減速しているどころか、まだまだ堅調さを維持している可能性が高いということだろう。やはり3日に発表された9月のISM非製造業指数が54.9となり、2023年2月以来の水準まで上昇したことをみても、アメリカの景気はサービス業を中心に堅調を維持していることがみてとれる。
それまで景気の急速な減速やFRBによる大幅利下げを織り込む形で、低下基調が続いていた同国の長期金利は、こうした強気サプライズ指標を受けて上昇基調にあり、10年債の利回りは再び4%を突破している。
ただし、本当に警戒すべきは景気の過熱リスクというよりは、インフレ圧力が改めて強まるシナリオではないか。
「港湾労働者6年で60%強賃上げ」の影響は小さくない
特に賃金の高止まりが続いていることには十分な注意が必要だ。雇用統計では時間あたり賃金の伸びが前年比で4.0%増と、2カ月連続で市場予想を上回った。
また、10月1日に港湾労働者がストを行い、1977年以来約47年ぶりに東海岸からメキシコ湾岸に至る港湾が閉鎖されたことにも注意が必要だ。今回は「未解決の問題はひとまず来年1月15日まで先送りする」ことで暫定合意が成立、ストは3日間で終了した。
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