「雑談のない職場」が致命的にダメである納得理由 環境を変えるだけでイノベーションが生まれる
東洋経済オンライン / 2024年10月29日 10時0分
この予期せぬ幸運は、イノベーションの混沌とした社会的側面から生まれる。ふとしたきっかけで始まった会話が議論や協力関係に発展し、大きな問題を解決することがあるのだ。
ランチを食べながらくつろいだ会話をしていて、飛躍的なアイデアにつながる千載一遇のチャンスが訪れるかもしれない。一般に、イノベーションとは1人の天才による孤独な活動の成果だと考えられがちだ。
だが、科学や工学における歴史上の偉大で画期的な発見の多くは、象牙の塔にこもって熱心に働く一個人によって成し遂げられたわけではなく、別分野の誰かによる偶然の洞察から生まれたものだ。
一例として近代原子論がよく知られる。会計というおよそ化学に縁のない分野に携わっていたアントワーヌ・ラボアジエが、化学界の誰も気づかなかったある事実に気づいた。
当時の燃焼理論〔訳注 フロギストン説を指す〕では反応の前後で帳尻が合わないのだ。何かが足りなかった。それに気づいたことが酸素の発見へとつながり、のちに近代原子論につながった。
幸運な出会いが生じる環境をつくる
飛躍的なアイデアにつながる会話を誰かに無理強いすることはできない。それは自然に生じるものだ。ただし、そのような会話が生じるように工夫することはできる。
つまりリーダーは、自社の「クリック」が「ワトソン」〔訳注 クリックとワトソンはDNAの分子構造の共同発見者〕を探し当てられる空間を提供し、2人で彼らのDNAモデルを発見できるように仕向けるべきなのだ。
博学者にして画家のレオナルド・ダ・ヴィンチにかんする世界的権威のマーティン・ケンプ教授は、次のように述べた。「知識を別々のサイロに貯蔵したら、その知識によって成せることには限りがある」。
イアン・ゴールディンとクリス・クターナが著書『新たなルネサンス時代をどう生きるか――開花する天才と増大する危険』で同様の指摘をしている。
「天才になるには、自分がどのような環境を選ぶかがますます大切になる。理由は2つある。技巧と集中である」。
どのような空間を選ぶかによって、未来をつくるために必要となる人に出会えるかどうかが決まるのだ。
(翻訳:鍛原多惠子)
トレイシー・カミレッリ:オックスフォード大学研究員
サマンサ・ロッキー:オックスフォード大学研究員
ロビン・ダンバー:オックスフォード大学名誉教授
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