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オードリー・タン氏実践「睡眠記憶法」の超合理性 睡眠の効能を最大限活用する徹底した工夫

東洋経済オンライン / 2024年10月30日 14時0分

このうちの3つ目がオードリーの睡眠記憶法だ。ストレスの多い現代人には睡眠時間をコントロールすることさえ難しいのに、眠る前に読んだ資料を眠っている間に消化するなど、実に不思議な話だ。どうやったらそんなことができるのだろうか?

睡眠が記憶力の強化に役立つことは、脳神経科学の医師も認めている。日本の心理カウンセラーでベストセラー作家の石井貴士氏は、『本当に頭がよくなる1分間記憶法』(SBクリエイティブ)のなかで、「短期記憶から長期記憶に移していく過程で必要なもの。それは、実は『睡眠』なのです」と指摘している。

徹夜して勉強してもすぐに忘れてしまうのは、睡眠不足が関係している。睡眠時には脳の神経細胞をつなぐ「シナプス」の結合が起こりやすくなり、記憶の整理が行われる。睡眠の過程のなかで短期記憶が長期記憶へと変換されるのだ。

だから眠る前に資料を読み、ひと晩ぐっすり眠って目覚めたら、セロトニンの分泌が盛んな朝のうちに昨夜読んだものを見直すという方法は、効率的で効果の高い方法だ。

また、正しい時間帯に睡眠をとることも重要だ。石井は、記憶を増強するには夜10時に就寝し、朝5時半に起きるのが最適だとしている。彼が提唱する「サンドイッチ記憶法」は、寝る前の90分間に本を読み、夜10時に就寝、起きた直後の90分間で前日に暗記したことを復習する、という3つのステップを踏む。

読みながら判断を下さないことが重要

オードリーの睡眠記憶法でカギとなるのは、眠る前にどれだけ正確に読めるかだ。彼女の場合、眠る前には知識系の文書、たとえば明日の会議の議題に関する資料や研究論文などを大量に、高速で読む。小説や詩集のようなものは、睡眠記憶法で消化したり記憶したりする必要はない。

それらはゆっくり味わうほうがいい。特に、長い詩歌など声に出して読みたくなるようなものは、じっくりと噛みしめるように読むべきで、大量に高速で読む方式には向いていない。音の一つひとつに込められたさまざまな意味を、すみずみまで味わい尽くしたいからだ。

では、知識系の本が睡眠記憶法に適しているのはなぜか? ここでの知識系の本とは、論文・ストーリー性のない読み物・教科書・歴史書など、事実を整然と描写したり記録したりするためのものを指す。こうした文章に使われる言葉は特定の意味しか持たず、読者は行間からさまざまな意図を汲み取る必要はないため、高速で読み込むのに適している。

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