東武日光線「合戦場から樅山」駅名何と読むのか? 特急が通過する「難読駅区間」地名に深い歴史
東洋経済オンライン / 2024年10月30日 6時30分
この駅も、楡木駅ともそれほど変わらない小さな無人駅。駅前には小さなタバコ屋さん(といっても営業はしていなさそうだ)があるくらいで、東西の山もさらに迫ってくるのどかな駅だ。が、この駅にはそれなりに見どころがあるようで……。
季節の変化を感じられる樅山駅
「駅の構内、ホームの脇に桜や柿、栗の木があるんです。春には桜が咲いて、秋には実り、季節を感じることができる駅なんですよ。楡木駅が田園地帯の中の駅だったのに対し、樅山駅まで来ると新鹿沼駅の市街地が近づいてきているからか、住宅地が目立つ印象です」(佐藤駅長)
相対式のホームの東側、つまり上り線のホームに面して駅舎があるものの、反対の下り線ホームからも直接外に通じている階段が設けられている。桜の木が植えられているのは、そのすぐ脇。春に訪れたなら、なかなか見物だろうと思わせる。そして……。
「樅山駅の少し北の踏切の脇には”金売吉次の墓”があるんです。その脇には立派なイチョウの木もあって、ていねいに維持されていますね。壬生にも金売吉次の墓とされるものがあります」(佐藤駅長)
金売吉次とは、奥州の金を京の都で扱う商人のこと。平安時代末期、源義経が奥州に下るのを助けたという伝説が『平家物語』などに残っている人物だ。多分に物語性の強い人物であり、そもそも実在したのかどうかも定かではない。
が、まったく突拍子もないところから創作されたというのもムリがあるから、奥州の金商人が何らかの役割を果たしたような事実はあったのかもしれない。
線路脇の“墓”が存在感
そして、実際に樅山駅北の踏切まで足を運ぶと、小さなお墓とイチョウの木。確かにちゃんと残されていました。線路を敷設した際に取り払ったら、運転士に祟りがあった……などというそれこそ真偽不明の言い伝えもあるほどで、地域にとっては長らく大事にされてきたお墓であることは間違いなさそうだ。
そんな樅山駅を過ぎると、車窓はだんだんと市街地の色が濃くなってくる。そうして、佐藤駅長が拠点を置く新鹿沼駅へ。ここからは、また機会を改めて旅を続けることにしたい。次は、いよいよ日光目前のラストスパート区間である。
鼠入 昌史:ライター
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