文化勲章に「ちばてつや」が選ばれた納得理由 「まっ白に燃えつきた」を知らない人はいない?
東洋経済オンライン / 2024年10月30日 9時20分
先頃発表された2024年度の文化勲章受章者の中に、漫画家・ちばてつや氏の名前があった。漫画家では初の受章とのことで、一人のマンガ好きとして喜ばしい。〈戦後漫画史の金字塔として語り継がれる「あしたのジョー」をはじめ数々の優秀な作品を発表し、漫画家の育成にも力を尽くすなど芸術文化の発展に大きく貢献した〉というとおり、ちば氏がマンガ界に残したものは極めて大きい。
【画像】“まっ白に燃えつきて”道端でビールケースに座る、こち亀の両さん
85歳の今も「ビッグコミック」で連載
85歳の今も「ビッグコミック」(小学館)で『ひねもすのたり日記』を連載する現役漫画家だ。とはいえ、ある年齢以下の人にとっては、あまりなじみがないかもしれない。『あしたのジョー』(原作:高森朝雄)は1968年から1973年にかけての連載だし、1998年に『のたり松太郎 駒田中奮闘編』の連載を終えて以降、短編がメインでストーリーものの連載からは遠ざかっている。「ちばてつや」という名前や『あしたのジョー』のタイトルは知っていても、作品自体は読んだことがないという人もいるだろう。
しかし、それなりのマンガ好きであれば、いろんな作品の中で登場人物が「まっ白に燃えつきた」シーンを一度は目にしたことがあるはずだ。たとえば、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』116巻収録の「祝い隊・出動!!の巻」の扉絵では、三社祭でエネルギーを使い果たした両さんがまっ白に燃えつきて道端でビールケースに座っている。
【画像】まだまだある「真っ白に燃えつきる」シーン
高橋留美子『1ポンドの福音』では、修道院の可憐なシスターをめぐって主人公の大食いボクサーと恋敵になるイタリア料理店のシェフ(実は料理が苦手)が、連日の料理特訓を経てパーティ料理に挑んだあげく、まっ白に燃えつきる。
マンガ史上最も数多く引用されたシーン
これらは言うまでもなく、『あしたのジョー』で無敵の世界王者相手の試合で完全燃焼した主人公・矢吹丈が、リング上で「まっ白に燃えつきる」ラストシーンを元ネタにしたパロディ(もしくはオマージュ)だ。あのラストシーンがマンガ史上に残る名場面であることは論をまたない。と同時に、マンガ史上最も数多くパロディ&オマージュとして引用されたシーンであることも、おそらく間違いない。
朝日新聞夕刊連載の4コマ、しりあがり寿『地球防衛家のヒトビト』では、2010年4月5~7日の3回連続で、新入社員が厳しかった就職戦線を思い起こして燃えつきてしまう。2019年にドラマ化された丹羽庭『トクサツガガガ』では、ジオラマ作品の個性について苦悩するモデラーが主人公の何げない一言でまっ白な灰になった。
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