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文化勲章に「ちばてつや」が選ばれた納得理由 「まっ白に燃えつきた」を知らない人はいない?

東洋経済オンライン / 2024年10月30日 9時20分

ほかにも、作:大場つぐみ・画:小畑健『バクマン。』、しげの秀一『頭文字D』、のりつけ雅春『マイホームアフロ田中』、とよ田みのる『これ描いて死ね』など、同様のシーンが登場する事例は枚挙にいとまがない。筆者が現時点で把握しているだけでも60近くの作品で、いろんなキャラがまっ白に燃えつきている。

つまり、それだけ多くの漫画家が、あのシーンを「誰もが知るマンガの基礎教養」として頭の引き出しに入れているということだ。読者の側も(実際に読んだことがなくても)知識としては知っている。名作と呼ばれるマンガは数あれど、ひとつのイメージがここまで広く共有されている例は、ほかにあるまい。

もちろん、ちば作品がマンガ界に与えた影響は、そんなワンシーンにとどまらない。キャラクター造形、セリフ回し、背景描写、コマ割りや構図といったマンガ表現の根幹の部分を、ちば作品から学んだという作家は多い。

『AKIRA』などで世界的に知られる巨匠・大友克洋もその一人。『文藝別冊 総特集ちばてつや』(2011年)収録のインタビューで、ちば作品のセリフやコマ割り、構図の巧みさを絶賛している。自身の勉強のため、ちば作品のコマ割りをトレースしてみたこともあるという。

影響レベルではなく心酔しているのが江口寿史だ。同じ『文藝別冊 総特集ちばてつや』の寄稿で、あふれんばかりの“ちばてつや愛”を吐露している。自身の作品の中でも『あしたのジョー』のパロディを何度も登場させており、例の「まっ白に燃えつきた」シーンなんてソラでそっくりに描けるに違いない。

『カイジ』の福本伸行は「ちばてつや賞」出身

先日デビュー50周年&『アイドルを探せ』40周年記念として初の原画展を開いた吉田まゆみも『総特集 吉田まゆみ』(2024年)のインタビューで「やっぱり“ちばイズム”には染まってます」と語る。この「ちばイズム」という言葉は『カイジ』シリーズで人気の福本伸行も口にしていて、「『カイジ』にしても『アカギ』にしても、“ちばイズム”と言ったら何ですけど、やっぱり主人公は絶対裏切らないとか、人を殺したりしないとか、そういう温かさというか健全さというか、そういうものが根底にある」と述べていた(前出『総特集ちばてつや』)。

福本伸行は「ちばてつや賞」出身。この賞は、単にちばてつやの名前を冠しただけでなく、最終候補作をちばてつや本人が読むことで知られる。「ちば先生に読んでもらいたい!」という動機で応募する作家も多く、きうちかずひろ、さそうあきら、望月ミネタロウ、岩明均、山田芳裕、新井英樹、すぎむらしんいち、ハロルド作石、きらたかし、原泰久、野田サトル、コウノコウジ、こざき亜衣、池田邦彦、山本崇一朗など、錚々たる面々を輩出している。次代の才能を見出すという意味でも、マンガ界への貢献度は高い。

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