ヤリス/ノート/フィットに透けるメーカー事情 3車に見た「トヨタ/日産/ホンダ」強みと弱み
東洋経済オンライン / 2024年10月31日 8時40分
一方、ヤリスの弱みは、日本専用ではないため日本人の趣味嗜好と合致しているのかが微妙なところ。コンパクトカーのメインターゲットである女性に受ける顔つきとは、到底思えない。
また、スポーティを売りにするが、意外とユーザー層の年齢は高い。売れてはいるが、本来のターゲットにミートできていないといえるだろう。
ノートの強みは、日本専用車であること。ヨーロッパのように時速150kmを超えるような超高速域を狙う必要がないため、パワートレインやシャシーも日本の道路事情にフォーカスされており、それが功を奏している。
また、他の日産車に通じる、安心感の高いハンドリングも魅力だ。職人肌のハンドリング担当者の存在が感じられる。これは、ノートに限らず日産全体の魅力であり強みだ。
弱みは、ハイブリッド専用としたことで、割安感のあるガソリン車がないこと。価格の安いグレードがないと、購入層の間口が狭くなる。そもそも日本市場向けのラインナップの少なさが、日産の弱みであるのだ。
メーカー統制がとれていないホンダ
フィットの強みは、実用性の高さだ。車両の中心となる前席の床下に燃料タンクを配置することで、後席まわりの空間を広く、使いやすくしている。
クルマが小さくても車内空間が広いのは、「マンマキシマム・メカミニマム(人の空間は最大に、機械の空間は最小に)」というホンダ伝統そのもの。また、シンプルでセンスがよいデザインも魅力的だ。
個人的には軽自動車の「N-BOX」も、安っぽくないセンスの良さが人気の理由のひとつだと思っている。車内が広く、実用的でセンスの良い、小さなクルマを生み出せるのは、ホンダの強みでもあるだろう。
一方の弱みは、フィット自体というより、ホンダのラインナップ統制のなさだろう。
昔からホンダは、ラインナップの整理整頓が苦手に見える。同じユーザー層を、自社の複数のモデルが狙っていることがあるのだ。
今回のフィットはファミリー層がターゲットとなるけれど、コンパクトミニバンの「フリード」も軽自動車のN-BOXも同じ層に向けたクルマだ。フィットの出来の良さに反して販売が苦戦しているのは、そうしたターゲットの問題があるのではないだろうか。
各クルマの出来に焦点を当てれば、どれも仕上がりが良く、実力伯仲だ。ただし、マーケットに対するアプローチは3メーカーとも異なっており、そこに強みと弱みが浮かび上がっているといえる。
【写真】ここまでを踏まえてヤリス/ノート/フィットの内外装を見る(28枚)
鈴木 ケンイチ:モータージャーナリスト
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