好景気だと?米国在住者が語る「物価高の厳しさ」 NYの平均家賃は約80万円、夜の街も閑散
東洋経済オンライン / 2024年10月31日 17時0分
国内総生産(GDP)の上昇や低失業率など“好景気”が続くアメリカ。が、普通に住んでいる人からすると、それは言葉が独り歩きしているだけのようだ。アメリカ在住の日本人スタンダップコメディアン、サク・ヤナガワ氏がアメリカの「好景気」の実態と実感を語る(本稿は『どうなってるの、アメリカ!』より一部抜粋・編集したものです)。
実感なき好景気、実感しかない物価高
「アメリカ経済を今、世界は羨望のまなざしで見つめている」
【写真】アメリカのマクドナルドで提供されている「5ドルメニュー」
2024年3月、ジョー・バイデン大統領が一般教書演説で声高に語った言葉だ。
その具体的な根拠として、バイデンは「50年ぶりの失業率の低さ」「3年間での1500万件の新たな雇用の創出」「製造業の堅調さ」そして「国内総生産(GDP)の上昇」を挙げた。
2020年第2四半期のアメリカのGDPは、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、前期比年率-32.9%と大きな打撃を受けた。政府はFRB(連邦準備制度理事会)とともに、実質ゼロ金利政策を行ったり、大規模な予算を投入したりと経済政策に乗り出し、その結果、数値で見ると、2024年には成長率が+2.5%に転じるなど一定の回復を見せていると言える。
製造業でもこの3年間で80万人の新規雇用が生まれ、国全体での失業率も継続して4%を下回り続けている。こうしたデータにもかかわらず、今年5月に市場調査会社ザ・ハリス・ポールが発表した世論調査によると「56%のアメリカ人が景気後退を感じている」と答えたという。バイデンの支持率の低さの原因に、こうした景況感の低さを指摘する専門家も多い。
私自身は経済の専門家ではないため、マクロの数値から細かく動向を読み解くことはできないが、少なくとも今、この「好景気」を実感することができぬままアメリカで暮らしている1人である。言い換えると、どれだけ景気の指数が好調でも、私(たち)の生活は苦しい。
ニューヨークの家賃は平均80万円
その大きな要因のひとつが物価高である。2020年からのコロナ禍、供給網の混乱とボトルネック化で一気に物価が高騰した。ミルクや卵、コーヒーにウーバー、身の回りのすべての物やサービスの値段が上がった。
そして2022年、ウクライナ侵攻による原油価格の高騰でさらに物価は上昇。バイデン政権は同年8月、1年半を費やし、悲願であった「インフレ削減法」を成立させたが、あれから2年、今も物の値段は上がり続けている。
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