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「なぜ企業は大胆変革できない?」経営学者の視点 「エコロジーベースの進化理論」で深く理解する

東洋経済オンライン / 2024年11月1日 8時1分

「ベンチャー企業の成長過程」と「宗教団体の成長過程」は、実に似た部分が多い(画像:Rawpixel/PIXTA)

「宗教」と「優れた企業経営」には実は共通点があり、「現代の強い企業」は、いい意味で「宗教化」していく。

それらの主題をもとに、世界の宗教事情に精通したジャーナリストの池上彰氏と、『両利きの経営』の解説者で早稲田大学教授の入山章栄氏が語り合った『宗教を学べば経営がわかる』が発売された。

同書を再編集しながら、「宗教」と「優れた企業経営」を理解するうえで最重要理論のひとつ「エコロジーベースの進化理論」を紹介しつつ、「『なぜ企業は大胆変革できない?』経営学者の視点」について入山氏が解説する。

*この記事の前半:スタートアップは「マイルドなカルト集団」なのか

「エコロジーベースの進化理論」ってなに?

前回の記事でも述べたように、企業や宗教団体が成長・進化していくプロセスを解き明かす「経営学の理論」が「エコロジーベースの進化理論」である。

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ノースカロライナ大学チャペルヒル校の経営学者ハワード・オルドリッチなどを中心にして打ち立てられてきた理論で、実際の経営学の英語では、たんに「evolutionary theory(進化理論)」と呼ばれることが多い。

なぜ私が「エコロジーベースの」という言葉を加え「エコロジーベースの進化理論」という造語にしたかというと、それはこの理論が、生物生態学を参考に作られているからである。

経営学には、生物生態学のアナロジーを企業分析に応用する領域があり、生態系における生物進化の過程のように、「特定業界のベンチャー企業も一定のプロセスで進化する」とみなすのである。

生物の特徴のひとつは、生物は一度生まれると死ぬまでDNA配列(ゲノム)を変えないことにある。

一度生まれ落ちた生物には、生きている間に大きな突然変異は起こらない。オタマジャクシは必ずカエルになるのであり、オタマジャクシが急にトカゲになることはない。

これを企業にたとえると、「一度生まれた組織は、ある程度その形が形成されると、以降その本質は大きく変化できない」ことになる。

実際、企業組織には硬直性があり、企業内のビジネスのやり方には慣性(学術的には「inertia」という)がある。

したがって、一度生まれた企業が業態を大胆に変え、まったく違う業種に変わるのはきわめて難しいのだ。

自動車メーカーが、銀行業で成功することは非常に難しい。スーパーマーケットが飛行機を作るのも不可能に近い。

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