定年世代が戸惑う「多様性の時代」の受け入れ方 「高度経済成長期」は迷うほど選択肢がなかった
東洋経済オンライン / 2024年11月1日 20時0分
懸命に働けばその先の幸せが見えていた「高度経済成長期」。その時代にモーレツに働きつづけてきた「昭和世代」にとって、多様性が求められる現代は、自分なりの「心理的な成功」を得ることが難しいと、一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事の有山徹氏は指摘します。
若い頃と劇的に変わってしまった価値観に困惑することなく、本当に「自分らしい」定年後を迎えるためにしておくべき準備とはどんなものなのでしょうか。有山氏の著書『なぜ働く? 誰と働く? いつまで働く? 限られた人生で後悔ない仕事をするための20の心得』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
「自分らしく」を選ぶのが難しい時代
近年は特に、自分なりの心理的成功を求める人が増えているように感じます。コロナ禍以降、私が代表をつとめるプロティアン・キャリア協会に相談に来る企業も個人も多くなりました。それは、なぜでしょうか? 察しがついているかもしれませんが、働き方の見直しがすごいスピードで進んだからです。
副業を始めたり、移住をしたりする人の話題が、よく目につくようになりました。そうすると、みんな会社や仕事に縛られなくなっている、自分の働き方を自分で決めようとしていると、少し焦る気持ちになりませんか?
ここで1つ質問です。1分間だけ考えてみてください。
Q: あなたが明日から「自分らしく生きる」としたら、何をしますか?
お金の制限はなく、仕事も自由に選んで構いません。ただ1つの条件は、あなたがあなたらしくあること。あなたのパーソナリティは何も変わらず、急にアスリートのような肉体になったり、IQが200になったりはしません。
どうでしょう。意外と答えるのが難しくないですか? 選択肢が多いほど選べなくなるのが、人の心理です。
これは心理学的にも正しいようで、1995年に、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授が、こんな実験をしています。24種類のジャムが並ぶ試食コーナーと、6種類だけの試食コーナーで、どちらが多く商品が売れるかを比較したそうです。
24種類のほうがたくさん売れそうですよね? 確かに24種類の試食コーナーには多くの人が集まりました。ところが、ジャムの購入率に着目すると、様子が違ってきます。6種類しか置いていないコーナーのほうが、10倍も多く売れたのです。
選択肢が少なく迷わなかった「高度経済成長期」
これは「ジャムの法則」として知られています。選べるものが多くなりすぎると、「あっちのほうがよかったかも」と後悔する心理が働いて、選択すること自体をためらってしまうというのです。選択肢が増えているのに逆に選びづらくなってしまっているので、「選択のパラドックス」とも呼ばれています。
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