発達障害かもしれない人の信頼を失わない働き方 ADHD・自閉症併存の声優が22年間皆勤できた秘訣
東洋経済オンライン / 2024年11月3日 18時0分
ものの置き忘れだけではありません。公共料金の支払いを忘れ、真っ暗な部屋の中でろうそくに火を灯して過ごした夜もありました。家賃を払い忘れ、玄関のドアに強制退去の紙を貼られたこともありました。
これらは、「自分への過信」が招いた結果です。きっと忘れないだろう、と過信することが、悲劇に繋がります。
人とのコミュニケーションにおいても同じです。言わなくてもわかってくれるだろう。伝わるだろう。多少のミスは許してくれるだろう。そういった過信で、いつか信頼を失います。
かつての私は、自分の行動を振り返ることもせず、「なぜあの人は私を嫌うのだろう。私は悪くないはずなのに」と考えてしまうことがありました。実際は、さまざまな細かい失礼を繰り返していたのに、それに気づかず過ごしていたのです。
毎回、自分の言動はおかしくなかったか、振り返るようにしましょう。何度も何度も振り返った結果、それでも、私たちからは抜け落ちます。私は、これを「魔のブラックホール現象」と呼んでいます。もしこの現象に陥ってしまったときは、潔く諦め、誰かに迷惑をかけたなら謝罪しましょう。それ以上自分を責める必要はありません。
ひとまず1回寝かせる
あなたはラブレターを書いたことはありますか? 私はあります。思いが募るのは、大抵真夜中です。募りに募った想いのままにペンを走らせ、書き綴ったラブレター。翌朝見返してみると……「なんじゃこりゃ! 気持ち悪っ!」。
このように、衝動的に書き綴ったものを冷静になって見返してみると、なんとも恥ずかしいものに仕上がっていることは、よくある話です。
わかりやすいようにラブレターの例をあげましたが、私たちADHDの特性のある人は、他の人よりも衝動的になりやすいので、仕事でも1回寝かせる、ということがとても重要になります。
私は執筆をする際、はじめに企画書を作ります。そのときは、発達障害の特性である「過集中」(何かをはじめると脇目もふらず一心不乱に集中すること)を働かせて、一気に書いていきます。そして、企画書を作り上げた瞬間、「やりきったぞ!」という達成感に包まれ、拳を天高く突き上げるのです。その状態で企画書を見返すと、どこからどう見ても最高です。企画が通る気しかしない。そんな自信に満ち溢れます。
しかし、私はこの段階で企画書を提出することは絶対にしません。がんばった自分自身を褒めたい気持ちが強く、悪いところが目に入らないからです。
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