稲盛氏が「コピー代2円」と答えた秘書を叱った訳 伝えたかった「労務コスト」と「経営者の視点」
東洋経済オンライン / 2024年11月4日 18時0分
京セラ、KDDIを創業し、それぞれを大企業に育成した後、会社更生法の適用となった日本航空(JAL)をわずか2年7カ月で再上場するまで再建。数々の功績から「経営の神様」と称えられる故・稲盛和夫氏。その言葉や考え方は今もなお多くの人に影響を与えています。
37歳で稲盛氏から特命秘書に任命され、約30年間にわたり最側近として稲盛氏の仕事を間近で見てきた大田嘉仁さんは、稲盛氏の言葉や教えをノートに書き留めていました。その数実に60冊!
「生き方」「リーダー論」「経営」「心のありかた」について選りすぐった稲盛氏の言葉を収録した『運命をひらく生き方ノート』より一部抜粋・編集してご紹介します。
全社員に求められる強いコスト意識
京セラを創業する際、技術者でしかなかった稲盛さんは、経営はいかにあるべきかわからず、大変悩んだといいます。
しかし、よくよく考えると経営とはそれほど難しいことではなく、売上を最大にして経費を最小にすれば、残りが利益になる。だから、全員で「売上最大、経費最小」を目指せばいいことに気が付きます。
それが全員参加経営とつながっていくのです。
京セラは製造業ですので、稲盛さんは常に製造現場での無駄の削減に注意を払っていました。
工場へ行けば「床にネジが落ちている。このネジ、1本いくらだ」とか、「原料がこぼれている。この原料は1グラムいくらだ」と問いかけて、現場社員の経費に対する感度を高めていきました。間接部門の人には「塵箱に何が入っているかを見たら、何を無駄にしているかわかるんだ」と、コスト意識を高めるように促していきました。
稲盛さんは、「神は細部に宿る」とよく言っていましたが、本気で「経費最小」を実現しようと思うのなら、「全社員にものすごいセンシティブなコスト意識が必要だ」と語り、普通は気が付かないような細部にまで無駄がないか目を凝らさなくてはならないと教えていました。
そのためのツールの1つが、アメーバ経営で活用する採算表です。
稲盛さんは、現場で使う部門別の採算表は、家計簿のように誰にでもわかるようなものにしなければならないと指摘していました。そのため、採算表の科目の名称、科目の順番も、現場の社員に最もわかりやすく、最も関心を引くように熟慮したものであるべきだと強調しています。
つまり、「すべてに意味がなければならない」のであり、そうしないと「ものすごいセンシティブなコスト意識」は生まれないというのです。
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