北海道新幹線「開業延期」で迷走する並行在来線 住民の意見を無視し、道はバス転換にこだわる
東洋経済オンライン / 2024年11月4日 6時30分
北海道新幹線の札幌延伸開業に伴い並行在来線となる函館本線の函館―長万部―小樽間はJR北海道から経営分離されることが決まった。通常のケースでは並行在来線は新幹線の開業に伴い第三セクター鉄道に経営移管されるのが通常であるが、道が主導する協議会では、2022年3月にまず輸送密度が2000人を超えている余市―小樽間を含む長万部―小樽間の廃止の方針を沿線のバス会社を協議の場に呼ぶことなく独断で決めてしまったことから、北海道中央バスは激怒。各所からも道に対する疑問の声が噴出していた。
その後、バスドライバー不足の問題が表面化したこともあり2023年5月28日のブロック会議を最後に長万部―小樽間の協議が1年以上にわたって中断されるという異常事態に陥っていた。2024年8月28日になり1年3カ月ぶりに開催されたブロック会議では、はじめて沿線にバス路線網を展開する北海道中央バス、ニセコバス、道南バスの3社が協議の場に呼ばれ、道側は鉄道代替バスの内容について説明を行った。
説明の内容は長万部―小樽間を9つの区間に分割し、余市―小樽間で21本、仁木―余市間で19本、ニセコ―倶知安間で16本の新設のバスが必要になるというものだったが、説明を受けた3社はいずれも既存のバス路線を維持するだけで手いっぱいの状態で、道が提案した鉄道代替バスの本数の確保は一様に困難であるとの姿勢を示した。
こうしたバス会社の姿勢を受けて、余市町の齊藤啓輔町長は、道の案は「バス会社の意見を踏まえると、成立しないとわかった」と強調するなど、沿線自治体の首長は道が提案するバス転換論は実現しそうにないという空気が広がった。地元紙の報道によると、道総合交通政策部の宇野稔弘交通企画監は代替バスの内容は「今後の議論の出発点として示した」としたものの、会合後には「この計画のまま行くとは思っていない」と話したが、道の担当者は「山登りに例えるならばようやく登山口に来た。これから長い調整が必要になる」と発言。あくまでもバス転換にこだわるという本音をにじませた。しかし、余市町の齊藤町長は、協議会開催前の2024年6月24日に開かれた定例町議会で「バス転換合意は迅速かつ大量輸送の確保が前提。それが崩れる場合は合意を撤回する」と答弁している。
大勢の客が殺到し、倶知安町の主張は破綻
新幹線新駅の建設が進む倶知安町では、新幹線新駅の整備に支障をきたすということを理由に、函館本線長万部―倶知安―小樽間の2025年での廃止を主張している。しかし、特に2023~2024年の冬の観光シーズンにかけては倶知安―小樽間ではインバウンド旅行者を含めた大勢の観光客で激しい混雑となり、途中の余市駅では乗客が列車に乗り切れなくなる積み残しが発生したことから、2月に入りJR北海道では日中に運行される2両編成のH100形気動車から3両編成のキハ201形気動車に車両を置き換えて運行を行っているなど、バスではさばき切れないほどの利用者がいる現状では倶知安町の主張は完全に破綻している。ある関係者は「倶知安町の廃止前倒しの主張については、道庁から2022年6月頃まで倶知安町に出向してきた参事クラスの職員が計画をまとめていたようだ」と証言する。
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