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スバル「レガシィ」国内で消滅、36年の歴史に幕 レガシィ アウトバックが2025年3月で販売終了

東洋経済オンライン / 2024年11月4日 8時0分

日本特有の5ナンバー車という位置づけは、1989年4月の自動車税改正によって、3ナンバー車が贅沢品との価値判断が緩和され、以降、自動車メーカーは意味が薄れたとの認識になった。だが、消費者からすれば、5ナンバーと3ナンバーの差は、たとえば自宅車庫のゆとりという点において違いがある。

限られた土地に自宅を持とうとすれば、部屋の大きさをできるだけ広く、ゆとりを持ちたいと願うのが心情で、車庫の寸法は必要最低限になる。その傾向は今日も変わらないだろう。また、高層マンションや高層ビルの建設においても、地震国の日本では柱の間隔をあまり大きく取れないことから、駐車枠や通路の幅にゆとりがない。それらの結果、3ナンバー車の車庫入れは、自宅においても、そのほかの駐車場においても容易ではない。

大きくなり続けたレガシィの車体

道路の幅も、基本的にはモータリゼーションが拡大した1970年代頃から大きく変わっておらず、運転しやすさにおいて5ナンバー車の利点はなお残されている。軽自動車が新車販売の3割前後を占めている状況が、その証しのひとつといえるのではないか。

そうした国内状況に対し、レガシィは車体寸法の拡大を続けた。理由は、北米での販売を伸ばすためだ。現地での販売店網の整備を含め、開発担当者が北米での成功を誇ったのは記憶に残る。一方、歴代レガシィを乗り継いだ所有者からは「もう手に負えない大きさになった。しかも4輪駆動なので、回転半径が大きく、何度も切り返さなければ取りまわしが悪い」という声が届くまでになった。

そうした声を受け、SUBARUは国内向けに「レヴォーグ」という新しいステーションワゴンを2014年に誕生させた。消費者の声を真摯に受け止めたといえるが、レガシィの役目は、少なくともこの時点で国内では終わりかけていたといえるだろう。

レガシィという言葉の意味は、いうまでもなく遺産であり、大いなる伝承物として後世に受け継がれていくものである。それは、レヴォーグに受け継がれたかもしれない。しかし、たとえ国内で大柄な輸入車が売れているとしても、レガシィへの価値は国内で消えざるをえなかったのだろう。

北米重視の代償とモデル終焉

北米重視とは、数の追求である。レガシィに限らず、トヨタの「ハリアー」も「RX」と名乗るようになり、北米のレクサスとして重要な位置を占めたが、国内では大きすぎるとして、改めてハリアーの車名を復活させ、国内で売り出した。また「カムリ」は、国内向けを終了した。ホンダの「アコード」や「シビック」は、やはり北米人気を軸に開発が進められ、国内で販売されてはいるが、影が薄くなったと言わざるをえない。

それらは一例だが、メーカーを代表したり象徴したりしてきた車種が、北米を軸にしたことで、存在が危ぶまれる傾向があるのは事実だろう。そのうえで、そのメーカーを代表する車種を、何か確保できているのだろうか。

代表車種というのは、まさにブランドであり、ブランドを失えばメーカーの存在意義も薄れていく。まして、電動化と自動化の時代へ移行していけば、淘汰の波に飲み込まれる懸念が高まる。時代の大変革とは、目先の商売しか見ずにいると、置いていかれ、捨て去られることを意味している。

御堀 直嗣:モータージャーナリスト

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