女性よりも男性を出世させがちな「石器時代の脳」 男性偏重の背後にある進化のミスマッチの問題
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 11時0分
横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。
では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。
今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
履歴書の評価に見られるバイアス
10年ほど前、名門大学の科学者たちが、研究室管理者の職に応募した学生たちを評価するように依頼された。
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彼らのもとに履歴書が送られた。彼らは用意された評価書を使い、応募者を採点して、資格や技能や経験に基づいて初任給を提案する必要があった。
「私たちは、学部生が科学の分野でのキャリアを進めるのを助ける、新しい指導プログラムを創設している、というのが表向きの説明でした」と、スキッドモア大学准教授のコリーン・モス=ラクシンは私に語った。
「私たちは教員たちに、研究室管理者職への応募書類のそれぞれについて、率直なフィードバックをしてくれるように頼みました」
教員たちは知らなかったが、履歴書は偽物だった。応募者の資質はさまざまで、この仕事にふさわしい人も、ふさわしくない人もいたが、肝心な操作が行われていたのは、冒頭だった。
捏造(ねつぞう)した履歴書には、男性と女性の名前のリストからランダムに選んだ名前が書かれていた。だから、同一の履歴書が、サラあるいはアレクサンダー、デイヴィッドあるいはアン、ジェイムズあるいはケルシーによって提出されたものに見えた。
違いはそれだけだった。それ以外は、応募者の資質は均等に分布するようになっていた。
公正な世界では名前は評価には関係がないはずだ。だが、私たちは公正な世界には暮らしていない。
教員たちの評価は、一貫して男性の応募者を高く採点し、提案する初任給の額も多かった。評価をしている教員が男性であろうと女性であろうと、違いはなかった。彼らは全員、女性に対する偏見を見せた。
そのような長年の性差別に、社会はゆっくりと目覚めつつある。だが、まだ肝心の疑問に答えが出ていない。そのバイアスは、文化的に学習されただけなのか、あるいは、女性差別も、私たちの有史以前の過去に根差しているのか?
太古から現代までの性差別の例
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