人間の脳は「150人以上の人」と仲良くなれない 現代社会における「進化のミスマッチ」の問題
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 12時0分
友だちの数、生産性の高いチームのメンバー数、縦割り化する会社の社員数……。これらの人数は、進化心理学者のロビン・ダンバーが発見した「ダンバー数」や「ダンバー・グラフ」に支配されている。古来より人類は、「家族」や「部族(トライブ)」を形作って暮らしてきたからだ。
メンバー同士が絆を深め、信頼し合い、帰属意識をもって協力し合う、創造的で生産性の高い組織を築くためには、このような人間の本能や行動様式にかんする科学的な知識が不可欠である。日本語版が2024年10月に刊行された『「組織と人数」の絶対法則』について、進化生物学者の長谷川眞理子氏に話を聞いた。3回にわたってお届けする。
進化心理学をビジネスに応用した初の書
進化心理学や進化生物学の知見が、ビジネスなど現実社会の組織運営に応用されることは、日本ではありませんでした。
【写真で見る】5, 15, 50, 150・・・・・・ この数字に秘められた「すごい力」がわかる本
「ダンバー数」や「ダンバー・グラフ」と呼ばれる5、15、50、150という数字の法則は、人間の脳の大きさと、その大きさで処理できる社会的な情報の限界という意味で、非常に重要なものだと思います。
150人という人数が、あまり苦労せずに人を思い出せる限界であり、人が一緒になれる人数だということ、そして、それが人間の社会生活を制限するものであるということもわかっていました。
しかし、「ダンバー数」を提唱したロビン・ダンバー氏自身、大脳新皮質の容量から数字を導き出した後、本当にそうなのかを実証することに時間を使ってきたわけです。
本書にも書かれているように、軍隊の組織は大体150人で1つのまとまりになっており、それが分割されていること、SNSなどの新しい装置が広まっても、そこで日常的に話せるのは150人が限度であることなどは実証されてきました。
その上で、「ダンバー数」を使って、この複雑な社会をどう運営するべきなのかに言及したのは本書が初めてでしょう。
人間の脳は大きく、色々なことを考えなければなりません。そのような脳になったのは、狩猟採集社会の歴史に理由があります。すごく複雑で大変な社会だったからこそ、それを乗り切るために大きな脳が必要だったわけです。
狩猟採集社会においては、5人の親密な家族、15人の仲良し、50人の知り合いがいて、全体で150人ぐらいの人数でうまくまとまっていました。
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