「重くて、遅い」パナソニックはAIで変貌できるか 18万人規模で導入し現場主導の企業文化を目指す
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 7時50分
現在も残る「上意下達」の文化は、それとは真逆のものだ。
常に最新のAI技術を活用
パナソニックグループは、積極的にAIを活用する企業の1つだ。しかも、グループ全体において、さまざまなAIを活用している。それが、「軽くて、速い」企業に転換するためのツールになると、楠見グループCEOは信じている。
グループ内では、日本マイクロソフトの社長などを務めた樋口泰行氏が率いる事業会社のパナソニックコネクトが、2023年2月からMicrosoft Azure OpenAI Serviceを活用した生成AI「ConnectAI」を先行する形で導入。同年4月には、ChatGPTを活用した「PX-AI」を国内9万人のグループ社員を対象に一斉導入し、同年7月には、GDPR規制がある欧州と、データ3法が施行されている中国を除く海外拠点にも展開し、約17万人が利用を開始した。
さらに同年8月には「GPT-4」にアップグレードし、同年10月には欧州でも展開。現在では、約18万人が活用する環境を構築した。2024年5月には画像や音声利用にも拡大し、同年8月に「GPT-4o mini」へアップグレードするなど、常に最新の技術を活用している。
なお、中国においては、グループ社員が別の生成AIを活用しているという。
今後は、事業部門ごとに社内データの活用やRAGにより、事業に最適化したPX-AIの利用を促進する。
PX-AIの推進役であるパナソニックホールディングス 執行役員 グループCIOの玉置肇氏は「樋口から、パナソニックコネクトが生成AIを導入するという連絡があってから数時間後には、楠見に対して、グループ全体でも生成AIを導入すると報告した。楠見の返事は、『それは当たり前だろう。さっさとやろう』という返事だった」と、導入に至るエピソードを明かす。
AIに対するパナソニックの基本姿勢「DAICC」
楠見グループCEOのAI活用に対する姿勢は、最初から前のめりだ。
ConnectAIやPX-AIが、業務の効率化という観点からのAIの活用であるのに対して、モノづくりのためのAIや、製品やサービスと融合したAIに関しても積極的に導入している。
例えばモノづくりのAIでは、開発部門において、GitHub Copilotをいち早く活用したほか、カリフォルニア大学バークレー校と共同開発したマルチモーダル基盤モデル「HIPIE(ヒピエ)」や、FastLabelとの協業による「Data-centric AI プラットフォーム」により、画像情報にタグやメタデータを付与するアノテーション作業の負担を軽減。開発の効率化を図ることができる。冷蔵庫にカメラを搭載し、収納された野菜の鮮度などを確認できるAIの開発が促進できるのだ。
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