「重くて、遅い」パナソニックはAIで変貌できるか 18万人規模で導入し現場主導の企業文化を目指す
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 7時50分
このようにパナソニックグループでは、数多くのAIを利用している。林立するAIの数を見ると、社内でも混乱が起きそうなほどだが、玉置グループCIOは「ひとつのAIでは、すべてが賄えない。また、誰かがすべてを管理し、承諾するという仕組みでは、AIの活用が遅れるだけである。AIが林立すること自体は悪いことではない。それによって混乱が起こるという怖さもない」とする。そのうえで、「大切なのは意図を持って林立させること。そして、AI倫理規定をひとつにすることである」とする。
パナソニックグループは、2022年8月に、AIの開発や運用、利活用において遵守する内容を定めた「パナソニックグループAI倫理原則」を策定し、事業会社がAIを活用する際の基本姿勢や、倫理的な観点からチェックするためのリストを、AI倫理委員会が策定し、グループ内に公開。適切なAI開発や利用が行えるようにしている。
AIの活用が社員の働き方と意識を変える
AIの活用は、これまでの働き方を変えるためのカンフル剤になるのは確かだ。
楠見グループCEOが、AIの活用に積極的なのは、そこに狙いがあるのかもしれない。
「AIの活用に対しては、社員の意識が変わりつつある。単純作業は生成AIで効率化し、自らは、お客様価値を生む仕事に集中する形へと働き方の転換が進んでいる。それができた組織や集団が、1歩も、2歩も抜きんでることになる」
そして、自主責任経営を促す環境づくりにもAIが活用でき、現場からのアイデアの創出を促進させることができるとの期待もある。
課題にあげるのは、「AIの活用を1人ひとりが身につけてもらう必要がある」ことだ。それは、楠見グループCEO自らにも課しているテーマである。
そして、「AIをあらゆる企業が手に入れ、それによって、ビジネスを変革しようとしている。それを知ったうえで、我々もビジネスをしていかなくてはならない」と、競争に不可欠なツールとなっていることも指摘する。
AIの活用が、社員の働き方と意識を変え、「重くて、遅い」という体質からの脱却のきっかけになるのか。パナソニックグループのAI活用は、そうした観点から見ることもできる。
大河原 克行:ジャーナリスト
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