「シグナル」闇バイトに悪用されるアプリの正体 徹底したプライバシー保護姿勢が生まれた背景
東洋経済オンライン / 2024年11月6日 9時0分
今年8月から首都圏などで相次いでいる「闇バイト」による強盗事件では、いずれも指示役と実行役らとの間で「シグナル(Signal)」と呼ばれるアメリカの通信アプリが多用されている。
【写真】現在のシグナルのベースとなる技術などを開発したモクシー・マーリンスパイク氏
シグナルは「エンドツーエンド(最初から最後まで)の暗号化」や「一定時間後に自動的にメッセージが消去される機能」など極めて秘匿性の高い通信アプリとされるが、いったいだれが何の目的でこうした特殊なツールを開発したのだろうか。シグナル誕生に至る経緯などを中心に追ってみよう。
権威に抗う若者によって開発された
シグナルはもともと、アメリカの暗号ソフト開発者モクシー・マーリンスパイク(本名:マシュー・ローゼンフェルド)氏を中心とする「オープン・ウィスパー・システムズ」という非営利団体によって開発された。正式に公開されたのは2014年7月のことだが、当初はiPhone用の通信アプリとしてリリースされた。
マーリンスパイク氏の生年月日は公表されていないが、アメリカメディアの報道によれば1980年代初頭にジョージア州で生まれたとされるから現在は40代半ばと見られる。188センチの長身でやせ型の白人男性だ。
彼はジョージア州の小さな町に生まれ、おおむね母親の手で育てられたとされる。また「モクシー」は幼少期のニックネームで、「マーリンスパイク」という奇妙な苗字は後に自分で勝手につけたらしい。
彼の母親は秘書やパラリーガル(法律事務職)などの仕事で生計を立てていたが、家計にゆとりがあったとは言えないようだ。
子ども時代のマーリンスパイク氏は当時通っていた初等学校の図書館に置かれていたパソコン「アップルⅡ」を使って独学でプログラミングを学び始めた。地元の高校に通う頃には、放課後にソフト開発会社で働いて収入を得るほど、腕前が上がっていた。
高校卒業後、カリフォルニアへ
一方、学業にはほとんど関心を示さなかった。高校をギリギリの成績で卒業するとすぐに家を出て、インターネット・ブームに沸く西海岸のシリコンバレーに向かった。1999年頃からサンフランシスコのベイエリアにある廃墟と化したビルに勝手に住んで、ソフト開発会社でプログラマーとして働き始めたとされる。
この頃の彼はヒッチハイクをして放浪の旅に出たり、サーフィンをするなど自由な生活を楽しんだが、その一方で警察に代表される体制側への反感を募らせていった。
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