「子どもの近視」を抑制するのは意外と簡単だ 身体機能を取り戻すカギは「自然」にあり
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 9時20分
窪田:日本ではこれまで近視は医学的に「屈折異常」と呼ばれ、病気として捉えられてきませんでした。病気ではないため「治療の施しようがない」「眼鏡などの矯正器具をつけましょう」という流れだったかと思います。
「近視は遺伝」と思われていた時代も長かったですね。「近くでテレビを観続けると目によくないよ」「遠くを見ると目にいいらしいよ」と世間では言われ続けていました。そして、その科学的根拠が明らかにされ、国民に周知されるのも遅いと感じています。
春山:歯に関しては、家庭以外でも、園や学校で「歯を磨くように」と散々言われています。歯を磨けば虫歯や口の中の病気を予防できることは子どもでも知っています。ですが、目に関してはあまり聞いたことがないですね。
窪田:これは歯科医の先生方が、子どもやその親たちの啓発に昔から力を入れてきたからです。歯に関する子ども向けの絵本も多いですしね。台湾をはじめ、中国では国をあげて近視抑制に乗り出し、子どもや親だけでなく教育機関をも巻き込んで啓発を一気に広げました。
日本でも文部科学省がホームページで、子どもたちの近視有病率が過去最悪で、それを食い止めるためにも1日2時間程度の外遊びを推奨する文言の掲載はしています。ですが、その情報が教育現場や子育ての現場でまだ周知されていないように感じています。
人間の身体機能の退化をどう取り戻すか
春山:人間が太陽光を浴びて身体を動かすという、原始時代からの変わらぬ身体の使い方がやはり健康にいいという考えは、私たち「ヤマップ」も同じ思いを持っています。
私たち人間の手は、パソコンを打つために、スマホをいじるためにできたのではありません。自然の中で歩いて食料を取ったり生活したりするためにこの身体に進化したわけです。人間の今までの進化と昨今の道具の進化スピードの乖離に危機感を持っています。
窪田:おっしゃるとおりですね。自分たちにとっては便利だと思っている道具の進化が、長期的には自分の健康を害する可能性がありますよね。
春山:進化した道具の影響を受けて、私たち人間の生活様式が変わり、その結果身体が変化する。目だけでなく人間の全身にとって屋外で活動することが大切ということですね。
窪田:新しいテクノロジーが私たちの生活に入ってきたら、まず一度立ち止まって考えることが必要です。例えばエスカレーター。便利で身体は一時的には楽だけど、長期的に考えるとエスカレーターを積極的に使い続けるのは身体の健康にとってはいかがなものかと思います。
失った身体機能を別な形で補うのか、はたまた失うことをわかったうえで受け入れるのか。私たち現代人が自然の中で身体を動かすことで、目をはじめとする健康を取り戻せるかが大事なのではないでしょうか。
(構成:石原聖子)
窪田 良:医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO
春山 慶彦:ヤマップ代表取締役CEO
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