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資源物「持ち去り」抑止に対峙したある職員の奮闘 条例で取り締まるだけでは持ち去りは減らない

東洋経済オンライン / 2024年11月7日 8時10分

資源ごみの持ち去りを条例で取り締まる自治体もあります *写真はイメージ(写真:よっしー / PIXTA)

筆者は健康維持のため毎朝ランニングをしているのだが先日、不燃ごみ排出の日に走っていると不審なトラックを見かけた。

【グラフ】持ち去られる「資源ごみ」、一番多いのは「空き缶」「新聞紙」「金属類」…どれ?

そのトラックはごみの集積所前だけ低速で走り、左に曲がるウインカーを点滅させたと思いきやすぐさま右に曲がった。少し追いかけてみようと後を追ったら、中年男性が家の前に排出された不燃ごみの袋を開け、なにやら金属製のものを抜き取って平ボディのトラックに積んでいた。

トラックには事業所や事業者名等は特に書かれておらず、一般廃棄物処理業許可業者ではない者だと判断できた。荷台には複数の金属製の排出物が積まれていた。

そもそもごみとして排出されているのだから、持ち去っても問題ないと思う人もいるかもしれない。だが、居住する自治体が定める条例や抜き取った排出場所によっては、資源物を集積所から持ち出すと罪に問われてしまう。

本稿では排出された資源物の持ち去りに関するルールを概観したうえで、持ち去り行為と対峙した行政職員の実践について述べ、資源物の持ち去りを撲滅していく意義について考えてみたい。

民法上の取り扱いと条例による持ち去りの抑止

ごみとして排出したものを着服する行為は法律的にどのように解釈されるのであろうか。

民法上、所有者がいないものは「無主物」(むしゅぶつ)という。そして民法239条には「所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する」として、「無主物の帰属」が定められている。

この条文を解釈すると、ごみの集積所に排出されたごみは「所有者のない動産」であり、所有権はごみを出した人ではなく、それを取得した者にある、となる。

よって、排出したごみから有価物を抜き取る行為は、民法上では窃盗罪にあたらないと解釈できるだろう。

しかし窃盗罪に問われないのであれば、排出されたごみからの抜き取りが横行する。排出者側からすると、ごみを漁られるのは当然、気持ちの良いものではない。

また、資源物を抜き取られると、その売却収入を見込んで収集体制を構築している自治体にとっては算段がつかなくなる。

そこで自治体は、「廃棄物の処理及び再利用に関する条例」や「清掃・リサイクル条例」「資源ごみ等の持ち去り防止に関する条例」といった条例を制定・改正。

「集積所に排出された資源ごみの所有権は自治体に帰属する」としたり、「首長等が指定する者以外の者が収集・運搬してはならない」と規定したりし、抜き取りがなされないように抑止している。

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