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資源物「持ち去り」抑止に対峙したある職員の奮闘 条例で取り締まるだけでは持ち去りは減らない

東洋経済オンライン / 2024年11月7日 8時10分

様子を詳細に伺うと「ごみ集積所に閉じ込められた」「子どもが突き飛ばされた」「持っているものを渡すように脅迫された」「子どもの通学時間帯にものすごいスピードで走り去る」とのことで、市民生活の安全までもが資源物の持ち去りにより脅かされている状況だった。

依田氏は本来ならご近所さん同士が仲良く挨拶を交わす場所であるはずのごみの集積所が危険な無法地帯と化している点に憤りを覚え、「体制が整わなくても俺一人でもやる」と決意し、早朝パトロールを再開した。

そして、持ち去り現場を押さえた際には条例で禁止されていることを伝えていった。外国語でまくし立てる連中には「ここは日本だ。日本のルール、文化を守れ」と日本語で反撃した。

このような依田氏の住民のために立ち向かう姿に同僚や後輩たちは心を打たれ、「僕らも手伝います」と言って一緒にパトロールをするようになった。最大時には6人で3班体制とし、1日当たり約700カ所のごみ集積所をパトロールした。

警察からは「条例違反で告訴するには4回以上の命令違反が必要」と助言された。また、排出された資源物の抜き取りが、集積所の排出エリアとして明示されている場所で行われている必要があるという。これに照らし合わせれば、告訴できるケースは1件もなかった。

一方で依田氏はパトロールを行っているうちに、条例違反での告訴を行うのではなく、「市の職員として市民の生活を守る。さわやかで安心な集積所を提供する」ことが目標となっていった。

依田氏は「時間とガソリンを使っても収穫無しにすれば、座間市には近寄ってこなくなる」と考え、自称「嫌がらせ大作戦」を展開していった。

持ち去りを見かけたら、運転席のドアの前に立ち、くどいぐらいに注意を与えた。このときの様子は密着取材され、テレビ朝日の報道番組で放送されている。

そこでは依田氏が資源物を持ち去ろうとしている者に、車に積んだ資源物を元の場所に戻させるシーンがある。市民生活を守るための気迫に満ちた仕事ぶりに依田氏の決意の表れが見て取れた。

この作戦は功を奏し、市内での持ち去りは減少していった。

資源の持ち去りが減り、夜間や早朝に集積所で脅される被害に遭う人はいなくなった。それだけでも成果であるが、それ以外にもさまざまな点が改善され、市民からは次のような声が届くようになった。

「子どもの通学時間帯の交通安全が守られるようになった」「公園で持ち去った空き缶を潰している人がいなくなったので、小さな子どもを連れて行きやすくなった」「市内の路上生活者が格段に減った」「市の職員は私たちの生活を守ってくれているという実感が湧いた」といった声であった。

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