日本のタテ社会に「上の人」がいないと困る訳 人類の進化史に「リーダー」は存在しなかった
東洋経済オンライン / 2024年11月8日 11時0分
進化生物学者の長谷川眞理子氏によれば、日本の文化ではみなが場を共有することで自分と他人の区別なく事に当たるので、何かを決めるには、みなが認める「上の人」という立場を作らねばならなくなるそうです(写真:PIXTA/siro46)
友だちの数、生産性の高いチームのメンバー数、縦割り化する会社の社員数……。これらの人数は、進化心理学者のロビン・ダンバーが発見した「ダンバー数」や「ダンバー・グラフ」に支配されている。古来より人類は、「家族」や「部族(トライブ)」を形作って暮らしてきたからだ。
メンバー同士が絆を深め、信頼し合い、帰属意識をもって協力し合う、創造的で生産性の高い組織を築くためには、このような人間の本能や行動様式にかんする科学的な知識が不可欠である。日本語版が2024年10月に刊行された『「組織と人数」の絶対法則』について、進化生物学者の長谷川眞理子氏に話を聞いた。3回にわたってお届けする(第1回はこちら)。
「飲み会」は進化生物学的に必要だった
5人くらいの小さな集団なら、お互いのことがわかっていてうまくやれますが、前回お話ししたように、普段からよく知っているわけではない人たちが、特定の目的のもとに大勢集まる場所では、わざわざグループの親和性を高める行為が必要です。
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特に、会社で全員をまとめるには、一緒に笑う、一緒に飲み食いする、一緒に物語を語り合うということを頻繁にやらなければなりません。それによって、脳の中に快楽物質エンドルフィンの放出を誘発し、結束を持ち上げるわけです。日本は、そうやって高度成長期を乗り切ってきました。
満員電車で通勤するという行動も、それ以外にオプションが見えなかったから、当然のことだと思って、みんなが苦労して1か所に集まっていた。
でも、コロナの影響でテレワークをやるようになり、通勤以外のオプションがあることがはっきり見えると、「イヤなことはやりたくない」と思うようになり、通勤を避ける人が出てきたのです。
高度成長期には、時代精神、時代の雰囲気というものも影響しています。
当時は、みんな貧しかった。でも、明日は必ず良くなると思っていました。「24時間働けますか」というCMもありましたが、それをやって絶対に儲かって、暮らしが良くなるという確信があったわけです。
でも、今は誰もそんなことは思っていません。一生懸命に働いたからといって、非正規が正規になるわけではない。そう考えると、あの時代だからできたという面があったことになります。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われましたが、何もかも良かったのかと言うと、そうではないでしょう。これまでの日本的経営の手法についても、なぜあの時に限ってうまくいったのか、そのまま現在に当てはめるのではなく、よく分析するべきだと思います。
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