日本のタテ社会に「上の人」がいないと困る訳 人類の進化史に「リーダー」は存在しなかった
東洋経済オンライン / 2024年11月8日 11時0分
日本の組織は、上下関係をとても大事にします。人類学者の中根千枝氏による『タテ社会の人間関係』(1967)という本がありますが、あれは本当に正しいと思います。
組織のなかで上になるのは、年齢よりも、先にその組織に入ったのはどちらかということになります。そして、会社も大学も、トップの会社、トップの大学から序列がついていて、さらに、それが組織として数珠繋がりになる形でうまくいっているのが日本です。
これを打破して、横の繋がりを作るのはとても難しいことで、組織のなかでの数珠繋ぎの上下関係を壊すようなことを言う人は、悪者になるのです。
自他の区別がない日本文化
よく、日本人は個人主義ではないと言われますが、個人がなく、みんな同じというわけではありません。自分と他人という区別をあまりしないのが日本の文化なのです。
「トンネルを抜けると雪国であった」という文には「私が」という主語がありません。同じように、「誰が〇〇した」と表現することは、日本語ではあまりありません。
しかし、それを英語に翻訳すると、I、You、Sheなど主語を言わなければなりません。
はっきりしたことを言わないのも日本人の特徴です。
例えば、「あのお芝居良かったね」「そうだね」ということまでは共感したとしても、「私は、ここがこういう理由で良いと思った」と細かいところまで言うと、「ウザい」となってしまうんですね。
日本は、何となくの場の共有ということを通じて、細かいことは言わず、みんなが良くなることを目指す社会です。「個人」ではなく、「みんな」がいる。だから、何かを決めようとすると「お墨付き」がないと困るわけです。
それぞれ個人の意思で関わっているなら、やりたい人がリーダーになるでしょうが、みんなが場を共有することで、自他の区別なくやっていくのですから、みんなの意見に「お墨付き」を与える誰かが必要になる。それが上下関係を作るのです。
また、上の人も言語化しませんから、みんな「背中を見て」育ちます。まずは雑巾がけ、掃き掃除から始まって、師は「これをしなさい」ということをはっきりと言いません。
もしすべてが言葉になっていれば、本を読むなどすればよく、上下関係も必要ない。でも、日本人は、背中を見て学べる偉い人がいなければいけないし、「どうしたらいいかな」とみんなが互いに顔を見あっている時に、おおかたの人たちが思っていることを「これでいきましょう」と言ってくれる立場の人がいなければならないわけです。
進化史上「リーダー」は存在しなかった
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