「本心」描く"故人を蘇らせるAI"は実現可能なのか 母親が蘇って、知らなかった側面が明らかに
東洋経済オンライン / 2024年11月8日 12時30分
劇中で母の筆跡やメールのやり取りなどをAIに学習させるシーンがありますが、今現在の技術であれば、大体1000件のいいデータがあればお母さん風に寄せることが可能です。後はそこに視覚だけでなく聴覚や触覚を加えられるかどうか……という話でしょうね。
人間に近い存在をつくるのが1つの目標
――その進化というのはChatGPTの登場もありますか?
そうですね。おそらくいちばんわかりやすいのはChatGPTの登場だと思います。ChatGPTが登場したのは2022年11月の末のことですが、あの日を境に一気に変わった。そして特にこの2年間の技術の進化がさらに加速しています。
――AIのテクノロジーというのは日進月歩の世界ではないかと思うのですが、AI業界のトレンドはどんどん変わっていくものなのでしょうか?
いえ、むしろ逆に目標はシンプルです。それこそこの映画でやりたかったこと、人間に近い存在をつくり出すことがひとつの目標だと思います。
たとえばちょっと前だったら、通販サイトの問い合わせのチャットなどでも、明らかにAIだというのがバレバレだったじゃないですか。けれどもこの2年間で技術は進化してきた。
ChatGPTが登場したときが大学1年生くらいだとしたら、最近出た最新版のChatGPTだと、もう博士号を持っていてもおかしくないくらいにまで進化しています。カーテンで隠してしまえば、自分の問いかけに答えているのが人間なのか、AIなのかどうかを見極めるのは難しいかもしれない。そういうところまで人間に近づいてきていると思います。
――そこまでですか。
だから最新版のChatGPTが出て、アメリカの医者たちは、俺たちの仕事がなくなるぞとざわついています。大きな病院に行ったら、半分はAI医師だったということになっても、全然不思議じゃない。
――イメージとしては単純労働をAIに任せておけば、その間、人間はクリエーティブな作業をすればよい。だから大丈夫、という論調もあったと思うのですが。医者のような専門職であってもそういう未来が?
もちろんAIが代替するのは医者が行う仕事の中でシンプルなタスクからでしょう。たとえばまずは軽傷かどうかを先にAIがチェックして、判断の難しいケースは人間の医者が時間をかけて見るようになる。
今までの産業革命では、まずは1次産業のほうに影響がありました。手で布を織る、シャベルで穴を掘る、というタスクが技術の進化により機械化されました。しかし今回は机に座って行うタスクに最初に影響がある。これは人類が今までに経験したことがない事態なので、だからこそみんなで考えなきゃいけない。
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