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「洋画は見ない…」日本の"洋画離れ"に起きた異変 不振だったディズニーは様々な施策が成果出す

東洋経済オンライン / 2024年11月9日 12時0分

「たしかに『インサイド・ヘッド2』はコロナ禍以降、同社初の50億円突破作品になりました。2024年正月の『ウィッシュ』(36億円)、シリーズ最高の『デッドプール&ウルヴァリン』(21億円)も入れると、この3本で優に100億円を超えています。ただ、2023年でも20億円以上が5本ありました。『まだまだ』の意味がそこにあります」(大高氏)

洋画シーンを牽引するディズニーだからこそ、今年の洋画へのいい流れのなかで、前年並み以上の成績が期待される。

同時に大高氏は、今年はこれまでの洋画不況と言われていた近年とは異なることにも言及する。

「洋画の話題作が多かった年だと思います。面白い作品、充実した作品が何本もあり、メディアが多く洋画を取り上げたことも重要です。興行は質的側面が最重要ですが、情報が飛び交うことが必須の条件です」と一定の評価をした。

一方、佐藤氏も今年のディズニー作品の話題性について「世の中のアップワード(話題性の高い流行語)のトレンドにうまく乗れている」と評価し、循環型の宣伝システムを機能させることによる、この先の長期的な成長に自信をにじませた。

この流れは、年末から来年へとどうつながっていき、本格的な洋画復興を迎えるのか。

ディズニーは、エミー賞最多受賞が日本でも大きな話題になったディズニープラスの『SHOGUN 将軍』を11月中旬に期間限定で劇場公開する。真田広之のプロデュース、主演によるアメリカのドラマである本作は、一般層の洋画鑑賞へのハードルを下げている。

また、年末には『モアナと伝説の海2』と『ライオン・キング:ムファサ』の大作シリーズが控えており、その宣伝施策には体験型のアトラクション付き鑑賞など興行社や商業施設と連動した郊外各地での観客の掘り起こしが進められている。その結果は、洋画興行のこの先の行方を占うものになるかもしれない。

佐藤氏は「ハリウッドのストライキで後ろ倒しになっていたディズニーの大作シリーズを含めた大型作品が、来年は洋画メジャー各社から本格的に戻ってきます。そこから洋画市場はさらに勢いづいていくのではないでしょうか。われわれは当然、今年よりもさらに高みを目指していくつもりです」と前を見据える。

洋画がどこまで盛り返せるか

1990年代から2000年代初頭は、洋画シェアが6〜7割。そんな時代もあった。時代は移り変わるが、エンターテインメントの流行には周期がある。いずれ洋画シェアが盛り返す時代が再来するだろう。問題はそれがいつになり、どこまでシェアを盛り返せるか。いまの時勢を鑑みると、シェア半々までが洋画の天井になる社会になることも十分考えられる。ただ、7割まで戻す可能性もゼロではない。

大高氏は今後の洋画興行に関して「さまざまな手立てを考えていく必要があると思います。多義的な『洋画復興』戦略ですね。洋画の面白さを、どのように伝えていくか。それは一筋縄ではいきません。豊富な情報量と話題性をどう押し出していくか。もはや、洋画、映画といったエンターテインメントだけの話ではない気もしています。日本人の意識のありようにまでかかわる問題であるかもしれません」とその難しさを指摘する。

そんな状況だが、近年まったく波風の立たなかった洋画シーンに、揺り戻しの動きが今年見られたことは業界にとって明るい兆しになる。その芽をいかに育てていくことができるか。洋画業界全体が知恵を絞って取り組まなければならないだろう。まずはこの年末から来年の洋画興行でどう結果を出すかが注目される。

武井 保之:ライター

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