科学で証明「寝不足だと食欲が増す」は本当だった 専門家が明かす、睡眠と太りやすさの深い関係
東洋経済オンライン / 2024年11月10日 15時0分
結論からいうと、お腹が減って空腹になると睡眠時間は減ります。また睡眠不足になると、食欲は増えます。この現象は、食欲と睡眠のコントローラーである、オレキシンが関わっています。
オレキシンは、脳の視床下部を中心に作用するホルモン(正確には、アミノ酸がつながったペプチド)ですが、強力な覚醒促進作用を持つだけでなく、食欲を増加させます22。
オレキシンは、覚醒しているときに活性化し、睡眠中には活動が止まります。このことからも、睡眠中に食欲がモリモリ出てくるということはありません。
キーワードはレプチンとグレリン
ここで、レプチンとグレリンという物質に登場してもらいましょう。「睡眠不足だと太る」という記事で、必ず出てくる物質です。
レプチンは、脂肪から分泌される満腹ホルモンで、食欲を抑えます。グレリンは、胃細胞から分泌される食欲増進ホルモンです。レプチンが食欲抑制(=やせる)、グレリンが食欲増進(=太る)と覚えてください。
食欲を増加させるオレキシンは、レプチンによって抑制され、グレリンによって促進されます。このことからも、レプチン不足、グレリン過剰は、食欲が増えて太りやすいことがわかります。
図2-9に示すように、空腹ホルモンであるグレリンは、食事をしたあとは濃度が急激に低下し、お腹が減ってくると徐々に増加していきます。グレリンは夕食の影響で、眠り始めに上昇してピークとなり、夜中になるにつれて徐々に低下していきます。
一方で、食欲を抑えるレプチンは、睡眠中にピークに達し、その後午前中にかけて低下します。この夜間睡眠中のレプチンの上昇によって、夜間睡眠で絶食状態になっていても、空腹を感じないようになっているわけです。
図2―10に示すように、慢性的な睡眠不足の状態では、レプチンは低下し、グレリンは上昇します23。つまり睡眠不足では、食欲が増加し、空腹を感じやすく、摂食行動を抑えにくくなります。
1日だけの寝不足でも要注意
最近では、たった1日の睡眠不足でも、レプチンが低下し、グレリンが上昇することがわかりました(図2―11)24。当然のことながら慢性的に睡眠不足が続くほうが、より頑固な肥満体質になっていくのはいうまでもありません。
最初にも書きましたが、レプチンとグレリンは、覚醒と食欲を司るオレキシンとのつながりが強い物質です。このことからも食欲と睡眠が、密接に関わっていることがわかります。
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西多 昌規:早稲田大学教授 早稲田大学睡眠研究所所長 精神科医
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