身寄りなし76歳が「孤独死」を覚悟した凄絶背景 単身世帯4割、誰もが「孤独難民」になりうる
東洋経済オンライン / 2024年11月10日 8時0分
孤独死や陰謀論が社会問題化している。その背後にあるのが、日本社会で深刻化する個人の孤立だ。『週刊東洋経済』11月16日号の第1特集は「超・孤独社会」だ。身元保証ビジネスや熟年離婚、反ワク団体など、孤独が生み出す諸問題について、実例を交えながら掘り下げていく。
大きなガラス張りの窓から、秋晴れの空と緑の芝生が見える。暖かな午後の光が差し込む美術館は芳子(仮名、76)のお気に入りの場所だ。ベンチに座った芳子は穏やかに話し始めた。
「まさかね、自分がこんなふうになるとは思わなかった。自分で死ぬことはできないけど、殺してほしいと思うことはあるの」
神奈川県内のアパートに1人で暮らす芳子は、8年前まで東京都港区にあった実家で暮らしていた。だが現在は経済的に困窮し、頼れる人もいない。芳子がつづったノートには、「孤独死する覚悟と予感がある」と記されていた。なぜ、そこまで追い詰められたのか。
母の死をきっかけに生活が一変
芳子は1948年、都内で生まれた。母親は終戦直後から活躍した、知る人ぞ知る評論家だった。芳子自身も幼少期から成績優秀で、都内の私立高校に進学。高校在籍中からジュエリー制作を始め、卒業後はデザイン専門学校に進んだ。21歳のときに雑誌の編集者と結婚するも、28歳で離婚した。その後長年連れ添った恋人はいたが、結婚することはなかった。
芳子の生活が一変したのは、母の死がきっかけだった。芳子はその訃報をテレビのニュースで知った。知らない間に認知症の母の後見人になっていた次男(芳子の兄)は、芳子を母から遠ざけていた。次男はさらに、母の持ち家だった港区の家を売却。そこに住んでいた芳子は、出ていかざるをえなくなったのだ。持病(後述)のある芳子は長年定職に就くことができず、母の仕送りを頼りに生活をしていたが、それも途絶えた。
その後は神奈川県内を転々とし、何とか暮らしを立て直そうと奮闘した。だが、ガスの料金を支払えず、1年半もの間ガスが止まるほど綱渡りの生活が続く。
2年前、自己破産の手続きをした芳子は生活保護を受け始めた。それでも困ったのが住居探しだ。家賃の安いアパートへ引っ越そうとしたものの、同じ市内で借りられる物件は見つからなかった。賃貸契約に必要な身元保証人になってくれる人がいなかったからだ。やっと見つかったのが、別の市にある築40年のアパートだった。
家族がいるのに、いない
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